2. 我が家にもあてはまるの?年収の壁試算で使われた前提条件とは
前章では、女性の出産後の働き方別に「世帯の生涯可処分所得」の増加を見ていきました。
「年収の壁を超えると手取りが逆転するのでは?」という懸念を抱えていた方にとって前向きな試算結果ではあるものの、その前提結果には注意が必要です。
政府の試算は、下記の前提条件のもと行われました。
2.1 年収の壁試算で使われた前提条件
- 夫婦と子ども2人の世帯
- 29歳で第1子、32歳で第2子を出産
- 第2子が6歳で復職
なお、パートにおける時給は1125円と仮定。1日の労働時間は、年収100万円で3.4時間程度、年収150万円で5.1時間程度、年収200万円で6.8時間程度とされています。
2.2 試算通りに行かないケース
上記を踏まえると、どの世帯でも「年収の壁を超えると世帯の生涯可処分所得は合計1200万円増える」とはいえないことがわかります。
例えば以下のケースが考えられるでしょう。
- 第2子の出産が37歳だったので、その後の就業年数が短い
- 6歳で復職の予定だったが、小1の壁で断念。復職が遅くなった
筆者も小1の壁でキャリアチェンジを余儀なくされた経験がありますが、キャリアプランは思い通りにいかないものです。
婚姻・出産年齢が上昇傾向にある今、政府の試算通りにいく世帯ばかりではないでしょう。
また、夫の配偶者手当が独自に上乗せされていることや、夫の年収によって税回りの金額が変わるケースも考えられます。
もちろん、反対に正社員で復職できたことで、年収や年金が大幅にアップするケースもあるでしょう。
大切なのはこのように一定の試算ができるということを知った上で、「我が家の場合」でシミュレーションしてみることです。
多くの方は「目先の手取り」を意識してしまいますが、生涯可処分所得に着目するのは非常に有意義なことです。特に将来の年金所得が増える点は、年収の壁を超えて働くことのメリットといえるでしょう。