RIZAPグループ株式会社が展開するchocoZAPの勢いが凄いことになっています。2024年5月15日時点で店舗数は1500店舗を突破し、5月21日には47都道府県への展開が完了。登場したばかりのときは「ちょっとユニークなジムの新形態」というイメージでしたが、わずか2年で「コンビニジム」というコンセプトを広く浸透させることに成功しました。
業績においてもインパクトのある数字が出てきており、5月15日に発表された2024年3月期の連結業績は売上収益が約1663億円(前期比7.6%増)で5期ぶりの増収を達成。営業利益は約5億9000万円の赤字でしたが、当初の約45億の赤字という予想を大幅に圧縮しています。
今回は決算説明会で示されたchocoZAPに関する数字と同社の瀬戸健代表取締役社長へのインタビューから「chocoZAPがどのように持続的な成長を目指していくのか」を紐解いていきます。
1. 【chocoZAPが急成長!RIZAPの今後は?】持続的成長の根拠となる数字
chocoZAPは2022年7月に月額2980円(税込3278円)という手軽さを武器にスタート。「ジムなのに多彩なサービスを追加料金なしで利用することができる」という独自路線を打ち出すことで、現在の「コンビニジム」というスタイルを確立させました。前述したように店舗数が急拡大したことでユーザーは「どこでも」というメリットも享受できるようになっています。
1.1 会員数は国内フィットネスジムNo.1、アクティブ会員も高水準でキープ
会員数は5月15日時点で120万人を超え、国内フィットネスジムにおいてNo.1を獲得したchocoZAPですが、合わせて注目したいのが退会率です。休会延長制度廃止の影響で直近の24年4月は一時的に上がる予想ですが、基本的にはサービス開始当初からアクティブ会員数をキープできており、定着させることに成功しています。
リーズナブルな価格や店舗数の多さはもちろん、低い退会率に貢献しているのが、トレーニング以外の多彩なサービスです。これらはユーザーのつなぎとめの役割だけでなく、新規入会者の動機付けにもなっています。国内フィットネスジムだけでみると市場規模は限定的ですが、カラオケ市場やランドリー市場からも顧客の流入が期待できると考えれば、まだ会員数の伸び余地はあるといえます。
1.2 黒字化店舗比率は約8割、時間経過で黒字化する構造を確立
今回の決算においてポジティブな数字が出た最大の要因といえるのが、chocoZAPが想定より早い段階で黒字化したことです。当初はサービス開始から18ヶ月目の黒字化を見込んでいましたが、14ヶ月目で達成したことにより、投資回収期間が前倒しされることになりました。
ここで重要なのは、chocoZAPの黒字化店舗の比率です。1年前の23年3月は黒字化店舗は全体の34%にとどまっていましたが、24年3月は全体の83%が黒字に転換しています。黒字店舗はほぼ出店6ヶ月目以降の店舗とイコールであり、時間の経過とともに黒字化する構造を確立できていることが分かります。
1.3 売上不振による撤退は「0」、商圏が狭く出店余地が大きい
実はchocoZAPは1500店舗を達成している現段階で、売上不振による撤退はまだ一度もありません。これは都市部においても、地方においても、地域に合わせたカスタマイズがうまく機能しているということです。同店の商圏が1km圏内(会員の約6割が1km圏内に居住)ということも考慮すれば、会員数と同じく出店余地もまだ十分にあります。
1.4 新サービス効果で利用者数・来店回数・入会者数が増加
chocoZAPは24年3月に新サービス第3弾として、カラオケやランドリーなど7種類のサービスを一挙に発表しました。まだ導入から3ヶ月のタイミングではありますが、すでに効果は出始めており、導入店舗は未導入店舗と比較して利用者数が1.23倍、来店回数が1.11倍、入会者数が1.56倍という結果が出ています。
これを受け、5月には導入店舗数を3月発表時の計画より増加させる方針を発表。カラオケは20店舗から300店舗に、ランドリーは70店舗から400店舗に、ピラティスは100店舗から700店舗に拡大させます。これらは次の成長エンジンとして、店舗あたりの会員数増をもたらすことになると予想されます。