日本刀や剣術を間近で! 侍体験イベントが天心流兵法と飲食店のコラボで実現

筆者撮影(以下同)

400年の歴史ある剣術の体験ショーを鶏料理屋で開催

江戸時代以来、400年にもわたり受け継がれてきた古武術の流派が天心流兵法だ。その門人が、武士の振る舞いや剣術の技法を紹介し、演武を披露、さらに侍体験できる場所が、「つくね侍 さかのうえ」という鶏料理屋。店内で土日の昼間にのみ開催するイベント「TENSHINRYU SAMURAI DOJO」をオープンさせた。

内容としては、オープニング演武(抜刀術、剣術が入り乱れる激しい演武を披露)から始まり、武士とはなにか、武士の心得、武士の生活を紹介。さらに模造刀を用いた抜刀、手裏剣投げ、刀剣鑑賞など、参加者も侍体験ができる。そのあと、試し切り、流儀内でも限られた者のみに伝授された秘太刀を公開し、エンディングでは座禅を侍と一緒に行なうといった、侍、武士を知り、体験できるプログラムだ。

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日本語プログラムは毎週土曜日、英語プログラムは毎週日曜日に開催し、料金は共に5000円。よくある役者が侍を演じる剣劇やショーではなく、天心流兵法を体得し、侍の心得を持った、言うなれば現代の侍とも言える門人が演武を行なっているところに大きな違いがある。

古武術と鶏料理という異色のコラボを企画したのは、渋谷エリアで19店舗の飲食店を経営する株式会社エヌイーエス。コラボしたきっかけを、営業本部長の久保木さんに伺った。

「以前、運営していた居酒屋のイベントで、天心流に出会い、現代にも侍が存在するのだと感動しました。そこで天心流さんに声をかけて、昼間は道場として使っていただき、土日は道場を開放して、お客さまに天心流に触れていただくというイベントを提案したのです」

ちなみにエヌイーエスが運営する店舗には、それぞれストーリーが与えられ、同じ内容の店舗はないという。

人を殺めるために生まれた天心流兵法とは

天心流兵法は400年の歴史があり、時沢弥兵衛を流祖として、徳川の世を陰で支える流儀として伝えられてきた。古武術の流儀はかつては1000ほどあったとされ、未だに隠れている流儀もあり天心流もそのうちの一つであった。現在では100ほどの流儀が残っていると言われている。

天心流の特徴は、剣術、抜刀術、槍術、十文字槍術、薙刀術、鎖鎌術、柔術を含み、武家の生活様式の中でも使用するため、稽古でも太刀と小刀の二本差しを常態とする流儀だ。

今回、プレス向けに演武を披露したのは、第十世師家である鍬海政雲(くわみまさくも)さん、代範の井手柳雪(いでりゅうせつ)さん、代範の滝沢洞風(たきざわどうふう)さんの3人。代範とは師範代のことで、名前は武号となる。

そのなかでも滝沢洞風さんは、メイド抜刀としても知られていて、華麗な技を動画サイトで見ることができる。また「つくね侍 さかのうえ」のサムライ社員として店で働いていて、不定期ではあるが店の営業中に簡単な演武を披露することもある。

写真左から代範 井手柳雪さん、師家 鍬海政雲さん、代範 滝沢洞風さん

狭い鶏料理屋で演武や稽古をする理由とは

昼間は道場として稽古することもあるというが、なぜ、天井が低く、柱も多くある鶏料理屋で、演武や稽古をするのだろう。

「天心流は、当時の武士が、お役目や実際に襲われた場合など、どんなところでも対応できないといけないという考えがあったのです。自分たちの好きな空間で戦えるというのは現実的ではありません。ですから、刀を振り回すのには不向きなところこそふさわしいのです」と、第十世師家の鍬海政雲さんは説明してくれた。

天心流の古武術は狭い店内でも威力を発揮する

渋谷の円山町は、ライブハウスも多く流行に敏感な人たちが遊びに来くることから、裏渋谷とも呼ばれている。また、30年ほど前までは東京で2番目に大きな花街として栄えていて、大正中期から昭和初期にかけては100軒以上の料亭があり、400人くらい芸者がいたといわれている。

同店では古武術だけでなく、芸者遊びや、書道家を招くなど、日本文化が楽しめるいろいろなイベントも開催していく予定だという。また、円山町には訪日外国人が多いこともあり、侍や武士、日本刀など日本の歴史文化に興味がある旅行者のインバウント需要も期待できる。

刀剣ブームはまだまだ続く

侍体験の一つである刀剣鑑賞では、刀の部位や名称、取り扱い方などを説明

刀剣ブームは2015年にPCゲームの『刀剣乱舞』が登場したことが発端で、刀剣女子と呼ばれる日本刀を愛する女子たちも多く生まれ、ちょっとした話題にもなった。その後『刀剣乱舞』はミュージカルや舞台化、アニメ化され、2019年には映画化が決定していることから、日本刀ブームはますます盛り上がっている。

日本刀は武士道の精神を感じられ、信仰の対象や権威の象徴でもあり、また他の武器に比べても圧倒的な切れ味や美しさを持つといった魅力があるが、その取り扱いはとても難しい。真剣よりも若干軽く、刃が付けられていない模造刀だとしても、実際に手に持つと興奮と緊張が交差するし、鞘(さや)から抜き、収めることすら容易ではなかった。

日常で日本刀や剣術に触れる機会はめったにないが、「つくね侍 さかのうえ」では気軽に見ることができるので、興味がある方は参加してみてはいかがだろうか。

鈴木 博之

参考記事

鈴木 博之

出版社で雑誌の編集者を経験したのちフリーランスとして活動。
現在は自動車雑誌をメインに、オウンドメディアやニュース配信サイトでの記事執筆も行っている、マルチ編集・ライター。