マンション投資「勝ち組」の台頭

都心部のマンションブームは、様々な意見が分かれるものの、一過性のものと言いかねるものがあります。再開発に伴う環境向上(予定)を受けてのマンション価格の高騰、職住近接のライフスタイルの一般化、コンパクトシティ構想に伴う高齢者の都心居住、人口増加想定エリアの選別、好立地マンションの供給量の増大等、様々な要因と思惑が絡み合い、大きく値上がりを見せる物件も多くあります。

現状として、リーマンショック後に購入した都心部のマンションであればほぼ価格は上昇しており、マンション投資においての「勝ち組」も多く見られます。キャピタルゲインとして2割程度の値上がり益を得た方も見受けられ、どこまで上がるのか、または下がるのか、といった今後の動向からも目が離せません。

ここでは、マンション投資について、いかに攻め、いかにリスクヘッジを行うのかを、より詳細なマンション特性を含めた新しい基軸で考えたいと思います。

1.マンションの投資を考える「Condominium Asset Management」(CoAM:コム)

マンション投資が熱を帯びる中で、これからも勝ち続けることができるのかは最も気になるポイントです。

マンション投資を考える上で、まず「マンション」というものの特性を把握することが重要です。区分所有建物(マンション等)は、同一建物内に複数の部屋があり、また、同タイプ・同エリアの異なる建物間において比較可能な部屋があるという、「特殊な不動産」です。類似比較が可能なため、物件間においてある程度横断的な情報分析ができ、「一点物」の要素が高い土地・一戸建等に比して、より論理的な資産価値分析が可能となります。

この一種「種類物」とも言えるマンションの分析・管理手法が、「コンドミニアムアセットマネジメント(Condominium Asset Management:以下CoAM)」です。

CoAMの作業においては一般的に言われるアセットマネジメントの基本通り、(1)購入時(相場よりも高くないか)、(2)保有時(ランニングコストは適正か)、(3)売却時(相場よりも安くないか)、の局面で物件の分析を行います。

(1)、(3)の流通側面、(2)の保有側面でどれだけ適切な価値判断を行えるかが非常に重要となり、CoAMではこれを突き詰めることとなります。マンション等の区分所有建物においては、(2)の局面で「管理組合」という、各部屋を保有している所有者で構成する団体が運営主体となるため、その管理のリスク等もしっかりと分析をしなくてはなりません。

ここまでの記載でわかるように、「物件評価が単純ではない」という点が特徴的な課題ですが、これは後述させていただきます。

2.CoAMにおけるゴール

CoAMはマンションという資産に関する分析・管理手法ですので、「利益を得る」ことがゴールになります。

一つ具体的な事例を考えてみましょう。

「借りると毎月の家賃等が20万円となる物件」を、諸経費(登記費用、媒介手数料、取得税等)全て込みで、5,400万円で購入しました。1年後に売却した際に200万円の持ち出し(保有及び売却時までの金利等・管理費等を含む総コスト)があった場合、いくらで売れれば「損」しないでしょうか?

【金額の整理】
① 取得コスト分:5,400万円 ② 売却時までのコスト分:200万円 ③ 1年間で得ている家賃相当の利益:240万円(買ったことにより収受した「家賃相当金額」)

【「売却して損しない」金額計】
損しない金額は、①+②(総コスト)から、③(買ったことにより収受した「家賃相当金額」)を引いたものとなります。

以上からわかるように、このケースでは5,360万円以上で売れれば利益を得られた、といえるのです。

この計算式は、つまりは「毎月の家賃相当分が保有コストを上乗せした物件価格から下がっても損はない」、と理解すると非常に楽です。「本来支払うべきであった家賃の金額」が、物件の売買を通して1円でも小さくなれば「儲かった」と言えるので、わかりやすさは抜群です。そしてこれは「買ったほうが得か」「借りた方が得か」という、明確な判断基準に置き換えることができ、これを突き詰めていくとCoAMのゴールが見えます。

3.評価額分析の必要性

以上のように、「負けない」マンション投資が何かはCoAMを通して把握していただけたと思います。ここまで検討を行った上でお気付きの方も多いかと思われますが、「じゃあいくらで買ったら損しないの?」、「いくらで売れば損しないの?」、「いくらで貸せる部屋を買えば良いの?」、「保有コストはいくらなら適切なの?」、「今後の修繕でいくら支払うのであれば適切なの?」という具体的な諸金額への疑問が湧いてくるのが実際です。

これらは「適正価格で買えるのか・売れるのか」、「適正な保有・管理コストで保持できるのか」という検討ポイントにまとめられます。最初のセクションでお話しした、「物件評価が単純ではない」というのがまさにこれです。

4.売買価格についての分析