2. 年金から天引きされるものは全部で4つ
年金から天引きされるものには次の4つがあります。
- 所得税
- 住民税
- 介護保険料
- 国民健康保険料(後期高齢者医療保険料)
それぞれについて解説します。
2.1 所得税
所得税とは、個人の所得に対してかかる税金です。
所得は、その性質によって次の10種類に分かれ、それぞれの所得について、収入や必要経費の範囲あるいは所得の計算方法などが定められています。
年金の所得は「雑所得」となります。
収入が公的年金のみという方は、65歳を境に一定の年金額以下であれば所得税はかかりません。
65歳未満と65歳以上で所得税がゼロとなる年金額は次のとおりです。
【65歳未満】
108万円(公的年金控除60万円+基礎控除48万円)以下であれば所得税はかかりません。
【65歳以上】
158万円(公的年金控除110万円+基礎控除48万円)以下であれば所得税はかかりません。
老齢基礎年金だけを受給している方は、満額の年金を受取っても81万6000円であるため所得税の天引きはありません。
65歳未満、65歳以上の方がもらう年金額が上記の額を超えた場合は、所得税・復興特別所得税(2037(令和19)年12月31日まで加算)がかかり、年金から天引きされます。
なお、受給する年金が、障害年金や遺族年金であれば非課税です。
2.2 住民税
住民税は、前年中の所得を基準に計算します。
その際、その年の4月1日現在において65歳以上で、年金の年額が18万円以上であれば年金から住民税が天引きされます。
所得税と同じく、受給する年金が障害年金や遺族年金であれば、非課税です。
2.3 介護保険料
介護保険料は、40歳以上のすべての人が被保険者となります。
会社員・公務員などは40~64歳までならば会社と個人が半々で負担しますが、65歳以上になると全額負担になります。
年金の年額が18万円以上の場合、年金から天引きされます。
2.4 国民健康保険料(後期高齢者医療保険)
65歳以上の人は「国民健康保険料」が、原則75歳以上の人は「後期高齢者医療保険料」が天引きされます。
なお、65歳以上75歳未満の人でも、重度障害などが理由で後期高齢者医療保険制度に該当する方は、後期高齢者医療保険料が引かれます。
なお、65歳以上75歳未満の会社に勤務している人で、健康保険組合などに加入している場合は、給与から健康保険料が天引きされます。
年金からは天引きされません。
3. まとめにかえて
年金から天引きされるのは、所得税と住民税、国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)、介護保険料の4つです。
総務省の2023年(令和5年)家計調査「65歳以上の夫婦のみの無職世帯・単身無職世帯 の家計収支」においては、税金や社会保険料は非消費支出として区別されています。
それぞれの年金収入と非消費支出の金額と割合は以下のとおりです。
- 夫婦世帯:年金収入(21万8441円)・非消費支出(3万1358円・約14%)
- 単身世帯:年金収入(12万6905円)・非課税支出(1万2243円・約10%)
年金の支給額から天引きされる税金と社会保険料の割合は10~15%ほどが目安といえます。
参考資料
舟本 美子