2. 加給年金を受け取る場合の注意点2つ

加給年金の注意点は、以下の2つです。

  • 年金の繰下げ受給をする場合は受けられない
  • 厚生年金が支給停止されると受けられない


年金の繰下げ受給とは、年金の支給時期を66歳以降に遅らせる制度です。

繰下げ受給を選んだ場合、1ヵ月ごとに年金が0.7%ずつ増額します。

しかし年金の繰下げを選択した場合、加給年金は支給されません。

また、厚生年金が停止されると加給年金は停止されます。

厚生年金が停止されるケースとして注意したいのは「在職老齢年金」です。

在職老齢年金は、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取った場合、年金額が一部または全額支給停止する制度です。

加給年金は、厚生年金を受給している場合に支給されます。

そのため、在職老齢年金によって厚生年金が停止されてしまうと、加給年金は支給されません。

以上から、加給年金が支払われないケースがある点に注意しましょう。

また、加給年金は配偶者が65歳に到達すると支給停止となります。

しかし、一定の要件を満たすと、配偶者が受け取る公的年金が上乗せされます。

配偶者の公的年金が上乗せされる「振替加算」について最後に確認しましょう。

3. 年金の振替加算とは?

振替加算とは、加給年金の受給要件を満たしていた配偶者が65歳に到達した場合、配偶者が受け取る年金に上乗せ支給する制度です。

振替加算のしくみ

振替加算のしくみ

出所:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

振替加算の対象者は、以下の条件を満たしていると支給されます。

  • 1926年4月2日から1966年4月1日までの間に生まれていること
  • 老齢基礎年金の他に老齢厚生年金や退職共済年金を受けている場合は、合計の加入期間が240ヵ月未満
  • 妻の共済組合等の加入期間を除いた厚生年金保険の35歳以降の加入期間が、以下の表未満

振替加算の条件となる厚生年金保険加入期間

振替加算の条件となる厚生年金保険加入期間

出所:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

振替加算の金額は、配偶者の年齢が若くなるごとに減額していきます。

【配偶者の生年月日:年額(円)・月額(円)】

  • 昭和2年4月1日まで:23万4100・1万9508
  • 昭和2年4月2日から昭和3年4月1日:22万7779・1万8981
  • 昭和3年4月2日から昭和4年4月1日:22万1693・1万8474
  • 昭和4年4月2日から昭和5年4月1日:21万5372・1万7947
  • 昭和5年4月2日から昭和6年4月1日:20万9051・1万7420
  • 昭和6年4月2日から昭和7年4月1日:20万2965・1万6913
  • 昭和7年4月2日から昭和8年4月1日:19万6644・1万6387
  • 昭和8年4月2日から昭和9年4月1日:19万323・1万5860
  • 昭和9年4月2日から昭和10年4月1日:18万4237・1万5353
  • 昭和10年4月2日から昭和11年4月1日:17万7916・1万4826
  • 昭和11年4月2日から昭和12年4月1日:17万1595・1万4299
  • 昭和12年4月2日から昭和13年4月1日:16万5509・1万3792
  • 昭和13年4月2日から昭和14年4月1日:15万9188・1万3265
  • 昭和14年4月2日から昭和15年4月1日:15万2867・1万2738
  • 昭和15年4月2日から昭和16年4月1日:14万6781・1万2231
  • 昭和16年4月2日から昭和17年4月1日:14万460・1万1705
  • 昭和17年4月2日から昭和18年4月1日:13万4139・1万1178
  • 昭和18年4月2日から昭和19年4月1日:12万8053・1万671
  • 昭和19年4月2日から昭和20年4月1日:12万1732・1万144
  • 昭和20年4月2日から昭和21年4月1日:11万5411・9617
  • 昭和21年4月2日から昭和22年4月1日:10万9325・9110
  • 昭和22年4月2日から昭和23年4月1日:10万3004・8583
  • 昭和23年4月2日から昭和24年4月1日:9万6683・8056
  • 昭和24年4月2日から昭和25年4月1日:9万597・7549
  • 昭和25年4月2日から昭和26年4月1日:8万4276・7023
  • 昭和26年4月2日から昭和27年4月1日:7万7955・6496
  • 昭和27年4月2日から昭和28年4月1日:7万1869・5989
  • 昭和28年4月2日から昭和29年4月1日:6万5548・5462
  • 昭和29年4月2日から昭和30年4月1日:5万9227・4935
  • 昭和30年4月2日から昭和31年4月1日:5万3141・4,428
  • 昭和31年4月2日から昭和32年4月1日:4万6960・3913
  • 昭和32年4月2日から昭和33年4月1日:4万620・3385
  • 昭和33年4月2日から昭和34年4月1日:3万4516・2876
  • 昭和34年4月2日から昭和35年4月1日:2万817・2348
  • 昭和35年4月2日から昭和36年4月1日:2万1836・1819
  • 昭和36年4月2日から昭和37年4月1日:1万5732・1311
  • 昭和37年4月2日から昭和38年4月1日:1万5732・1311
  • 昭和38年4月2日から昭和39年4月1日:1万5732・1311
  • 昭和39年4月2日から昭和40年4月1日:1万5732・1311
  • 昭和40年4月2日から昭和41年4月1日:1万5732・1311

振替加算を受けるために、特別な請求の手続きはありません。

振替加算が受けられる要件を満たしているか、支給前に確認しておきましょう。

4. 加給年金と振替加算に該当するか確認しましょう

配偶者や子どもを扶養している場合、加給年金が支給されます。

振替加算は、加給年金の受給要件を満たしていた配偶者が65歳に到達した場合、配偶者が受け取る年金に上乗せ支給する制度です。

どちらの制度も支給要件が複雑なので、実際に支給対象となるかは年金事務所に確認しておきましょう。

参考資料

川辺 拓也