就職活動では、会社説明会に参加したり、面接を受けるといったことはもちろんのこと、企業研究をしたり、OB・OG訪問を行ったりと、これまで経験のない新しいチャレンジをすることになります。できることなら、この経験が将来の役に立つ知識や人脈につながれば…と考える人も多いでしょう。
とはいえ、経験せずに済むのであれば経験したくない、というものもあります。そのうちの一つにいわゆる「圧迫面接」があるのではないでしょうか。
ここでは圧迫面接について、「面接時に面接官が作る『雰囲気』や面接官による『質問内容』および『質問の仕方』で、面接を受ける人が威圧感を感じる面接」と定義して話を進めていきたいと思います。
圧迫面接は「売り手市場」で意味があるのか
そもそも、圧迫面接をして意図的に就活生が威圧感を感じるように仕向け、その結果として彼らからその企業がよいイメージを持たれることなどまずないと思われます。もし就職を希望する企業であったとしても、圧迫面接を受けたとしたら、一瞬でそのイメージが覆ってしまうかもしれません。有望な人材が逃げてしまう可能性さえあります。
しかも、最近の就活市場は人材不足などの背景もあり、企業が採用を積極的に行う「売り手市場」であると言われています。つまり、就活生のほうが圧倒的に有利な環境ともいうことができます。そこでわざわざ就活生の心証を悪くするような圧迫面接などする意味があるのでしょうか。
圧迫面接の目的はどこにあるのか
される側はもちろんのこと、する側にしてもあまり気分はよくないのでは、と思われる圧迫面接。一方で「圧迫面接は就活生のストレス耐性と対応力を見るため」という話はよく耳にします。
実際に、かつて金融機関で採用を担当した経験があるという人は「土壇場でいかに感情をコントロールして進められるか、つまりストレスをどうマネジメントするかが仕事では重要です。これを面接だけで必ずしも把握できるわけではありませんが、多少であれば面接のプロセスの中でわかります」と言います。
確かに仕事を始めれば、突然のトラブルに対応したり、困難な交渉が必要な場面も出てくるかもしれません。また、さまざまなバックグラウンドを持つ人が関わりながら仕事をするわけですから、職場でも多かれ少なかれ何らかのストレス要因が発生する可能性もあります。
また、選ぶ職種によっては厳しいストレス環境に置かれることがあるのも事実といえます。大学卒業後、大手電機メーカーを経て米国の有名大学でMBAを取得し、帰国後には外資系金融機関やファンドに勤務、現在は会計士だという人は次のように語ります。
「学歴や資格はその仕事に就くためのきっかけにはなるけれども、給与は仕事の成果を求めるためには避けて通れないストレスの対価だったと思います。結果はもちろん問われるけれども、(結果を出すことよりも)ストレスの多い環境で仕事を続けていくほうがより難しい」
企業側からすれば、採用プロセスの中で、こうしたことを乗り越えて成長していける人材かどうか見極めたい、働き始めた後のさまざまな対応力をイメージしたい、ということかもしれません。
最近はインターンシップなどの際にも企業側が学生のストレス耐性を知る機会はあるでしょう。ただ、実際に社員として仕事をするのとインターンシップとでは結果に対するプレッシャーも異なるので、同一に扱えないのも確かです。もし圧迫面接をするとすれば、こうしたストレス耐性に関する情報のミスマッチを埋めるプロセスに位置付けている可能性もあります。