厚生労働省が公表している「新規学卒者の離職状況」によれば、新規大卒就職者で調査対象の産業に就職した人数は、平成26年3月卒では42万7,000人超。それに対して、3年目までの離職者数は13万7,000人超。つまり30%超は3年目までに一度は離職していることになります。
「まず3年はやってみよう」とよく聞きますが、実際には、3割もの人が「石の上にも3年」いない、という状況なのです。30歳までに辞める人、となればもっと多いかもしれません。また、これは希望した会社・業種に行けなかったから、といったことに限らず、学生に人気の大手企業、自ら希望して入社した企業でも例外ではないようです。
ではなぜ、若者は会社を辞めていったのでしょうか。
将来が見えなくなった
A氏は私立大学を卒業後、ホテル業界に入りました。元々サービス業を志望していたうえ、入社した会社が運営するホテルの名前は比較的よく知られていて、親も喜び、当時はいい会社に入れたとうれしかったそうです。現場に配属され、日々目の前で動いていく現場を取り仕切るのが面白くて仕方なかったといいます。
しかし、A氏は3年も経たず、この会社を辞めました。その理由を彼はこのように語ります。
「ある日の夜、課長と給料の話になって。当時40代でお子さんが2人いらっしゃったと思うのですが、いわゆるサラリーマンの平均給与に達するかどうかだったんですよね。こんなに働いてもそれだけなのか、と」
もっと稼げる職場に行きたいと、人と接することが好きだったA氏は製造業の営業マンに転職。そこで得た営業スキルと元々のコミュニケーション力を生かして、現在は外資系企業のトップ営業マンとして活躍しています。
まだ何もしていないのに…
B氏は、私立大学を卒業後、運輸業の企業に就職。希望していた事業部に配属され、事業部内で研修を受け始めてわずか数日で事件が起きたのだそうです。
それは配属先の入社3、4年目の先輩社員と新入社員での飲み会での出来事。その場にいた全員の前で、ある先輩社員が「ほかの奴らは俺たちが厳選してこの事業部に入ったメンバーだけど、Bは希望したから仕方なく入れてやった」と高らかに宣言したのだといいます。
「その場にいた全員の雰囲気が凍るなか、この先輩は何度も何度もそれを繰り返しました。今思えば思い切りパワハラですが、当時は何も言えなくて」とB氏。その後「部署全員がそう思っているのではないか」と不安に思う日々が続いたのだといいます。
結局、1年後の人事部との面談でB氏自らこの件を訴えたことでB氏は異動に。その後は、広報や秘書などで活躍し、30歳で転職しています。
「別部署に配属された同期は直属の上司のパワハラにあって1年で辞めました。私は『絶対に活躍してから辞めてやる』と思っていたので3年ではなかったですけど、異動していなかったら3年なんてとても。でも、最初にひどいことを言ってきた先輩以外とは実は今でも良好な関係を築いていて、たまたま当たりが悪かったのかなって思ったりもします」