定年退職年齢の引き上げや70歳までの就業機会確保に向かって動いている昨今、60歳を超えても働くことが主流の社会と言えるでしょう。
60歳を機に働き方やライフスタイルを再検討するのが主流でしたが、最近では現職を継続する人も多いです。
実際のところ、現代社会において多くの60歳代は働いているのでしょうか。60歳代の就業率を貯蓄額とあわせて見ていきましょう。
1. 60歳代の半数以上が働いているが
独立行政法人労働政策研究・研修機構は「「60代の雇用・生活調査」結果」において 60~69歳の5000人(60~64歳 男性1600人、女性1100人 、65~69歳 男性 1,400人、女性 900人 )を対象に2019年にアンケート調査を行いました。
調査時点(2019年6月1日)での60代の人々の就業(仕事)の有無は以下の結果になっています。
60~64歳(男女計)において就業「した」と回答したのは70.2%です。男性は約80.8%、女性は59.8%が何らかのかたちで就業しています。
一方、60歳代も後半になると、就業「した」と回答した人は少なくなります。男性は59.6%、女性は41.1%となっています。
60歳代の就業率(男女計)は59.0%となっていますが、60歳代前半と後半では大きく就業率が異なります。
現在は65歳から年金を受給できるため、年金受給の開始とともに働き方を見直す人が多く、年金受給開始年齢までは何かしら働く人が多いと言えます。
とはいえ、全ての人が年金を受給できるわけではないのが現状です。
現役時代に年金保険料を支払ってこなかった人や支払い年数を満たしていない人は、年金の支給対象にはなりません。
また、働く理由は人それぞれ。十分な年金を得ていても、社会とのつながりを求めて働く人や健康維持のために働く人もいます。
【図表1】において、2019年の60歳代の就業率(男女計)は5年間で3.6ポイント上昇しており、今後もさらに高まると見込まれます。
2. 60歳代の資産保有額の平均は2000万円に届かず
現代の60歳代は資産形成を行えているのでしょうか。
2.1 単身世帯の資産保有額の分布
まずは単身世帯について、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和4年)」を参考に見ていきましょう。
【図表2】では、単身世帯の金融資産の平均は1388万円、中央値は300万円となっています。
そして、「金融資産非保有」と回答した人は28.5%と、全体の約3割でした。また、金融資産保有者と貯蓄額が300万円未満の人をあわせると半数近くになります。
一方、「3000万円以上」の金融資産の保有者は全体の16.9%と比較的高い割合になっています。
多額の金融資産を保有している人もいますが、世間一般で見ると単身で暮らす60歳代の多くが将来のお金について不安を抱えているとうかがえる結果です。
2.2 二人以上の世帯の資産保有額の分布
続いて二人以上の世帯について、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」を参考に見ていきましょう。
60歳代・二人以上世帯の金融資産の平均は1819万円、中央値は700万円です。
前述の単身世帯の資産保有額と比べて、平均も中央値も高いことに気付きます。
また、「金融資産非保有」と回答した人も一人世帯よりも8ポイントほど少ない結果です。
さらに、【図表3】では「3000万円以上」の金融資産を保有している人は全体の20.3%と高い結果になっています。また、約3割が2000万円以上の金融資産を保有しています。
とはいえ、二人以上世帯の半数以上が500万円以下の貯蓄しかありません。
500万円前後の貯蓄に加えて、月額14万3973円(参照:厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」令和5年12月)の年金では節約を意識した暮らしになるでしょう。