就職や転職する会社を探したり、どこにするかを決める理由は様々です。仕事のやりがいやキャリアアップなどの理由もあるでしょうし、仕事の対価として給与をもらう以上、給与水準が一番重要という場合もあるのではないでしょうか。
今回は、企業データなどに詳しい証券アナリストに、どのような資料やデータを見れば給与を知ることができるのかを聞いてみました。
会社が公表する給与データはここにある
上場企業が開示する資料に「有価証券報告書」というものがあります。これは決算内容だけではなく、企業の沿革や従業員数、役員の経歴などもわかる資料です。
この資料の中に「従業員の状況」という項目があり、その有価証券報告書を提出している会社の連結従業員数、単独の従業員数、平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与などが詳細に記載されています。
これは会社が公式に開示した資料であるので、就活生や転職希望者は面接の前に目を通しておくとよいと思います。有価証券報告書は証券アナリストも重要視する決算資料であり、有価証券報告書に精通しているかどうかでアナリストの資質が問われるものでもあります。
三菱商事の平均年間給与は1400万円弱
では、就活生に人気がある三菱商事の有価証券報告書を見ていきましょう。
2017年3月期の三菱商事の有価証券報告書によれば、提出会社(つまり単体)の従業員数は6233人。平均年齢は42.5歳で、平均勤続年数は18年5カ月です。
そして注目の平均年間給与は1386万2987円で、実に1400万円弱となっています。これほどの給与水準であるということが、多くの学生から注目される背景と言えるのではないでしょうか。ちなみに、平均年間給与には超過勤務手当および賞与が含まれています。
事業セグメントごとの就業人数もわかる
三菱商事単体の従業員数6233人に顧問・嘱託の165人、他社からの出向者230人、海外支店現地社員825人を加え、他社への出向者2236人を差し引くと、就業人数は5217人となります。
この5217人の内訳を見ると、最も多いセグメントが「生活産業」で830人、次いで多いのが「化学品」の628人、「エネルギー事業」の547人と続きます。
たとえば生活産業は、食料、繊維、生活物資、ヘルスケア、流通・小売などを扱うセグメントです。単体の事業ではありませんが、同事業の主な子会社としてコンビニエンスストア大手のローソン、持分適用会社としてライフコーポレーションがあります。
また、生活産業はローソンを連結子会社化したこともあって従業員数が大幅に増え、連結従業員数7万7164人のうち、3万9633人を占めています。よって、三菱商事にとって生活産業という事業は重要だと見ることができます。
このように、自分が希望する事業がその会社の中でどのような位置づけにあるのかも理解することができるなど、有価証券報告書は有用な資料ということが言えます。
有価証券報告書の有効な使い方
有価証券報告書では、上述のような従業員数や給与、平均勤続年数だけではなく、いわゆる売上高や営業利益、また総資産や負債、株主資本などを見ることもできます。
他にも、利益率が高い会社は従業員に支払うことができる給与の余裕があるとも言えますし、株主資本が厚ければ株主への配当原資が十分あると見ることもできるなど、様々な使い方ができると思います。
就職活動や転職活動をする際、「証券アナリストマインド」をもって企業や産業の分析してみるというのはいかがでしょうか。
LIMO編集部