3. 「公的年金・恩給」収入だけで生活するシニア世帯は約4割
それでは、今チェックしてきた年金収入だけで暮らしているシニア世帯は実際にどのくらいなのでしょうか。
公表されている最新の「国民生活基礎調査の概況」によれば、年金を受給する高齢者世帯で「公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯」は44.0%でした。
前回の2021年調査において、年金が総所得に占める割合が100%の世帯は24.9%。前々回の2019年調査では48.4%。
割合がガクッと下がった昨年と比較して、一昨年の状況に近しい結果となりました。
年金受給額は本人や世帯により異なりますが、状況だけみると収入の柱となりうる存在だといえるでしょう。
4. 【65歳以上・無職夫婦世帯】シニアの「平均支出額」はいくら?内訳は?
なかには「年金の見込額がわかっても、支出がどれくらいになるか知らない」という人もいるかもしれません。
まずは現在の支出額をざっくりと把握し、そこからカットできるものがあるか、そして生活できるかを考えるステップに移っていきましょう。
今回は比較対象として、総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2022年(令和4年)平均結果の概要」より「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支を見ていきます。
4.1 65歳以上・無職夫婦世帯の「1ヶ月の平均生活費」
- 収入:24万6237円(うち社会保障給付22万418円)
- 支出:26万8508円(うち消費支出23万6696円)
- 収支:▲2万2270円
平均では、恒常的に2万2270円の赤字となりました。消費支出の内訳は次のとおりです。
- 食料:6万7776円
- 住居:1万5578円
- 光熱・水道:2万2611円
- 家具・家具用品:1万371円
- 被服及び履物:5003円
- 保健医療:1万5681円
- 交通・通信:2万8878円
- 教育:3円
- その他:4万9430円
- 非消費支出:3万1812円
上記をもとに「我が家でもっとかかる費用」「我が家ではここまでかからない費用」を差し引きし、支出の目安額をつかむのもひとつの手です。
ただし日常的な支出だけでなく、医療費や介護費用、住宅の改修費用なども見込んでおきましょう。
もし赤字になる場合、リタイヤではなく仕事による収入を得るのか、それでも貯蓄を切り崩して生活したいのか、夫婦でしっかり考えておく必要があります。
5. 老後の資金対策として、今からできることを考えよう
年金収入だけでは十分ではないと感じた人や、今のペースで貯金していくだけでは安心した老後を迎えられないと焦りを覚えた人もいるのではないでしょうか。
現在の日本は低金利であり、預金してもお金は増えてくれない時代。そのため、資産運用などを通じて賢くお金に働いてもらい、自分で老後資金を準備していくことは必要不可欠といえるでしょう。
資産運用といっても多くの方法がありますが、自身の目的や現状にあった手段を取り入れていくことが重要です。国の税制優遇制度である新NISAやiDeCoなどもあるため、初心者からでも投資が始めやすい環境が現代は整っております。
なお、投資には元本割れなどのリスクも伴うため、きちんとリスクを理解しておくことが重要です。この機会に、自分のライフプランに合った運用方法を探してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 株式会社パーソル総合研究所「働く1万人の就業・成長定点調査」(PR TIMES)
- 厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2022年(令和4年)平均結果-(二人以上の世帯)」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2022年(令和4年)平均結果の概要」
菅原 美優