3. 給与から天引きされるお金は他にもある

給与から天引きされるのは健康保険料だけではありません。

3.1 天引きされるお金1. 所得税と住民税

所得に応じて所得税や住民税も天引きされることが多いです。所得税は、その年の所得金額に応じて5%~45%の税金が課税されます。

2037年までは2.1%の復興特別所得税も加算されます。

また、住民税は前年の所得に応じて課される「所得割」と一律で課される「均等割」からなります。退職や転職などで前年の所得と変動がある場合には注意が必要です。

3.2 天引きされるお金2. 厚生年金保険料

天引きされるお金で負担が大きいのは、厚生年金保険料かもしれません。厚生年金の保険料は、標準報酬月額や標準賞与額に保険料率18.3%を掛けて算出されます。

健康保険料と同様で、事業主と折半した金額が天引きされます。

たとえば標準報酬月額が30万円の人の場合、18.3%である5万4900円が保険料になります。この半分である2万7450円が給与から天引きされるのです。

3.3 天引きされるお金3. 雇用保険料

雇用保険料も給与から天引きされます。2024年度は2023年度と同じ料率になることが決まっています。

  • 失業等給付等の保険料率:労働者負担・事業主負担ともに6/1000(農林水産・清酒製造の事業及び建設の事業は7/1000)
  • 雇用保険二事業の保険料率(事業主のみ負担):3.5/1000(建設の事業は4.5/1000 )

例えば一般事業で働く月収30万円の人の場合、負担額は1800円になります。

冒頭でお伝えしたとおり、介護保険料では40歳~65歳の負担分が引き下げとなりました。しかし、年度によって引上げになることも多く、こうした変動にはしっかりアンテナをはっておきたいところです。

天引き額は今後も増える可能性があるため、給与明細でしっかり確認をしておきましょう。

4. 天引きされる保険料。保障や給付の確認を

給与から否応なしに天引きされる保険料に対し、「病院にかかっていないのに損した気分」と感じるかもしれません。

特に若い世代にとっては、健康保険制度に助けられる人もいれば払うだけの人もいるものです。

とはいえ、いざというときの出費に備える公的制度のため、必要性が高いものといえます。公的保障を知らないまま、過度な医療保険に加入してしまったという方も見受けられます。

まずはどのような保障があるのか、しっかり知っておきましょう。意外に使えていない給付内容があるかもしれません。

4.1 健康保険

公的な健康保険制度は、病院の受診が自己負担3割(年齢や所得に応じて1割~2割の場合あり)になるための制度と捉えられているかもしれません。

もちろん間違いではないのですが、この他にも役立つ制度はあります。

たとえば入院や手術などで医療費が高額になったとき、一定以上は自己負担しなくて済む「高額療養費制度」があります。

また、出産一時金や傷病手当金なども、大きな金額に備えるための心強い制度です。

年に一回の健診や、オプションで受けられる生活習慣病予防健診の自己負担額も抑えられるかもしれません。

4.2 雇用保険

雇用保険は失業保険とも呼ばれているため、失業時の給付が主にイメージされるかもしれません。しかし、それだけではないのです。

例えば仕事で使えるスキルをもっと磨きたい場合、教育訓練給付金が受けられます。教育機関の講座や通信教育講座などの費用を補助してくれる制度です。

また、育休中の手当も雇用保険から支給されます。

「払った分の恩恵が受けられない」と不満に思うこともあるかと思いますが、見逃している制度がないか、一度確認してみるのも重要です。

5. まとめにかえて

毎月の給与からは、驚くほどのお金が天引きされます。せっかく賃上げの気風があっても、実際の手取りが増えなければ意味がないように感じてしまいますね。

一方で、手取り額や天引き額に無頓着という方もいます。

健康保険料率の改定によって、天引きされるお金がじわじわ増えていることに気づいていない方もいます。

まずは給与明細を確認する習慣からつけてみてはいかがでしょうか。

参考資料

太田 彩子