「老人ホームで恋愛する入居者はいるのでしょうか?」

ケアマネジャーの筆者に、こんな質問が寄せられました。結論から申し上げますと、老人ホームでの恋愛はあります。

今回は、筆者が老人ホームで目にした、とある入居者さん同士のほのぼのした恋愛のお話……、と言いたいところですが、入籍や相続が絡んでくると少しややこしい展開となりそうです。

1. 出会いは老人ホーム

老人ホームで出会った二人

老人ホームの広間。テーブルとイスがある。

sukiyaki/shutterstock.com

A夫さんとB子さんが出会ったのは、老人ホームでした。

A夫さんは83歳。妻とは5年前に死別しています。現役時代は会社を経営。多くの従業員を抱える会社で、今は長男さんが後を継いでいます。

A夫さんは、今もアパート経営などを手がけています。社交的で感受性豊か、思い込んだら一途な性格といった感じ。気さくな一面もあり、スタッフや利用者からも人気がありました。

一方、B子さんは81歳。10年以上前に夫を亡くし、自宅で一人暮らしをしていました。支援している長女さんは遠方に住んでおり、一人暮らしが不安になり老人ホームへの入居を決めたのです。

B子さんは、いつも笑顔で話す穏やかな性格の持ち主。老人ホームに入居するまで、友人や地域の人たちから慕われていたようです。自分の意見をハッキリ言う筋の通った一面もあり、凛とした素敵な女性でした。

B子さんが老人ホームに入居した日、二人は出会います。B子さんは、慣れない施設の雰囲気に緊張していたようです。

そんな時にA夫さんが優しく話しかけて緊張をほぐしてくれたのが、きっかけでした。二人はすぐに意気投合します。

2. 二人の気持ちは高まり結婚の約束まで

二人の相性は、よほど良かったのでしょう。食事やおやつの時間はもちろん、多くの時間を一緒に過ごすようになりました。

しかし変に人前でイチャイチャするようなこともなく、周囲の人に迷惑をかけるような行為はまったくありません。

数カ月が経過して、二人は老人ホームの誰もが認める仲の良いカップルになりました。中には、二人が夫婦だと勘違いする利用者さんも居られたようです。そんな二人を職員も温かい目で見守っていました。