近年、物価上昇によって私たちの生活が圧迫されています。総務省によると家庭で消費するモノやサービスの値動きをみる消費者物価指数は、去年1年間の平均で天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が前の年より3.1%上昇しました。

第2次オイルショックの影響があった1982年以来41年ぶりの水準です。

家計を考えるうえで困る場面が増えたのではないでしょうか。同時に将来の生活に不安を覚える方もいることでしょう。

厚生労働省によると老後生活を支える柱の一つとなる公的年金の平均月額は、厚生年金が14万3973円(国民年金部分を含む)・国民年金が5万6316円です。

人によって受給額は変わりますが、近年の物価上昇を踏まえると少ないと感じる水準かもしれません。

そこで今回は、厚生年金にスポットをあて、平均月額よりも多い月額20万円以上を受け取る方がどの程度いるのかを確認していきます。

1. 厚生年金と国民年金について

日本の公的年金には「厚生年金」と「国民年金」があります。

日本に住む20歳以上60歳未満の人が原則として加入するのが国民年金。

そして、会社員や公務員などの対象者が国民年金に上乗せする形で加入するのが厚生年金です。

それぞれの仕組みを確認しておきましょう。

1.1 国民年金:1階部分

  • 加入対象:原則、日本に住む20歳から60歳未満の方
  • 保険料:一律(年度ごとに見直しあり。2023年度は月額1万6520円)
  • 年金額:年額79万5000円(2023年度の年額)✕調整率(未納期間がある場合は減額調整)

1.2 厚生年金:2階部分

  • 加入対象:主に会社員、公務員など
  • 保険料:報酬比例制(毎月の報酬により決定)
  • 年金額:加入期間や納付保険料により決定(国民年金に上乗せ支給)

上記のとおり、同じ公的年金ですが対象者や保険料、年金額の決定方法が異なります。

2. 【2024年度】年金は2年連続の増額改定へ

厚生労働省によると、2024年度の年金額の例は次のとおりとなります。

  • 国民年金(老齢基礎年金):6万8000円(1人分※1)
  • 厚生年金:23万483円(夫婦2人分※)

※1昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額6万7808円(対前年度比+1758円)です。

※2平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準。

厚生年金の金額は、2023年度(令和5年度)が22万4482円でした。月額で6001円増えることになるようですね。

また国民年金の満額も、2022年度が6万4816円、2023年度が6万6250円、2024年度が6万8000円と増額しています。

とはいえ、名目手取り賃金変動率が3.1%である一方、年金の増額率は2.7%です。つまり物価上昇ほどには追いついていないため、実質的には目減りとなります。

3. 厚生年金を月額20万円受給する割合はどれほど?

厚生労働省が公表した「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金保険(第1号)の年金月額階級別受給権者数を抽出し、割合を算出してみましょう。

※厚生年金には国民年金の金額も含まれます。

3.1 厚生年金(老齢厚生年金)の受給額

〈全体〉平均年金月額:14万3973円

  • 〈男性〉平均年金月額:16万3875円
  • 〈女性〉平均年金月額:10万4878円

※国民年金の金額を含む

このデータをもとに、厚生年金をひと月20万円受け取っている人の割合をみていきましょう。

  • 1万円未満:6万1358人
  • 1万円以上~2万円未満:1万5728人
  • 2万円以上~3万円未満:5万4921人
  • 3万円以上~4万円未満:9万5172人
  • 4万円以上~5万円未満:10万2402人
  • 5万円以上~6万円未満:15万2773人
  • 6万円以上~7万円未満:41万1749人
  • 7万円以上~8万円未満:68万7473人
  • 8万円以上~9万円未満:92万8511人
  • 9万円以上~10万円未満:112万3972人
  • 10万円以上~11万円未満:112万7493人
  • 11万円以上~12万円未満:103万4254人
  • 12万円以上~13万円未満:94万5662人
  • 13万円以上~14万円未満:92万5503人
  • 14万円以上~15万円未満:95万3156人
  • 15万円以上~16万円未満:99万4044人
  • 16万円以上~17万円未満:104万730人
  • 17万円以上~18万円未満:105万8410人
  • 18万円以上~19万円未満:101万554人
  • 19万円以上~20万円未満:90万9998人
  • 20万円以上~21万円未満:75万9086人
  • 21万円以上~22万円未満:56万9206人
  • 22万円以上~23万円未満:38万3582人
  • 23万円以上~24万円未満:25万3529人
  • 24万円以上~25万円未満:16万6281人
  • 25万円以上~26万円未満:10万2291人
  • 26万円以上~27万円未満:5万9766人
  • 27万円以上~28万円未満:3万3463人
  • 28万円以上~29万円未満:1万5793人
  • 29万円以上~30万円未満:7351人
  • 30万円以上~:1万2490人

以上から、厚生年金を「ひとりで月20万円以上」受給している人は14.8%ということが分かりました。

8割強の人が月20万円未満ということになります。

なお、ここで確認した受給額は額面となる点にご留意ください。

金額は個人で異なりますが、税金や社会保険料が天引きされ手取り額は額面の85~90%程度となるでしょう。