テーマ株投資といっても様々なバリエーションがあります。これから伸びそうな産業分野のテーマに関連する企業への投資、利益成長率が高いと期待される銘柄に投資するグロース株投資、株価が割安と判断した銘柄に投資するバリュー株投資など様々です。

今回は日本の癒しの原点とも言え、昨今では外国人観光客にも人気の温泉について、関連銘柄をピックアップしました。

はじめに

日本の癒しの原点とも言うべき温泉。農閑期の湯治や合戦の傷を癒すためなど、日本人は古くから温泉に親しんできました。そして今や温泉は現在のインバウンドブームの中、外国人観光客にも人気のスポットとなっています。

そんな温泉に関連する銘柄を考えてみたいと思います。

なぜ温泉関連銘柄に注目するのか

少子高齢化社会を迎えている日本では、観光産業も変化の渦中にあります。

昨年発行された「レジャー白書2017」によると、2016年の余暇市場のうち、観光・行楽部門の市場規模は前年比0.3%減の10兆5,560億円となり、5年ぶりの減少となっています。ただし、国内観光・行楽は同1.1%増の7兆810億円と増加。このうちホテルは同2.5%増(1兆3,160億円)、旅館は同1.2%増(1兆4,600億円)となっています(注)

金融不況の際に、一部地域では経営に苦しむホテル・旅館が続出しましたが、現在では有名温泉地の熱海、そして別府は新しい活況の中にあるようです。また、昨今はインバウンドの恩恵が広がりを見せており、日本ならではの「体験」を求める外国人観光客から温泉に対する注目が集まっていることも、好調の一つの要因だと言えるのではないでしょうか。

外国人観光客にも人気の温泉は、日本の観光産業にとって重要なコンテンツになるとともに、温泉地に関わる産業も新しい段階に入りつつあるのかもしれません。

(注)出所:公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書2017―余暇の現状と産業・市場の動向―」(2017年8月)

温泉関連テーマを詳しく見る

では温泉関連のテーマで、どのような銘柄が恩恵を受けるのでしょうか? 今回は3つのサブカテゴリーを想定しています。

ホテル運営会社

温泉地でホテルや旅館を運営する企業は、温泉地への観光客増加の恩恵を受けることができます。

鉄道会社

温泉地へのアクセスを有する鉄道会社は、温泉地への観光客増加により、直接的に売上増加を見込むことができます。

温浴施設保有会社

温泉地のホテルのみならず、スパやスーパー銭湯などの温浴施設を保有する上場会社も存在します。都心に近い温浴施設は、手軽さに加え物珍しさも加わり、訪日外国人観光客にも人気のスポットとなっています。

温泉関連銘柄とは

ここでは先のテーマに関してさらに個別銘柄に落とし込んでいきましょう。カッコ内は銘柄コードです。

オリックス(8591)

子会社のオリックス不動産にて多数のホテル・旅館を運営。ホテル・旅館の再生にも定評がある。別府市で最大の規模を誇る杉乃井ホテルも運営(2001年の経営破たん後にオリックスが買収)。

藤田観光(9722)

リゾートホテル、レジャー施設などを運営。人気温泉地・箱根で長年人気を博した箱根ホテル小涌園は老朽化により2018年1月に閉館したが、現在は2017年4月にオープンの「箱根小涌園 天悠」が中心施設となっている。

東京ドーム(9681)

東京ドームに併設されたスパ施設「スパ ラクーア」を運営。都心にも関わらずゆったりとしたスペースのスパ施設であり、天然温泉も楽しむことができる。

九州旅客鉄道(9142)

別府温泉・湯布院温泉を抱える大分まで特急「ゆふいんの森」を走らせるなど、大分までの移動に欠かすことのできない存在。別府温泉は外国人観光客にも人気。

コシダカホールディングス(2157)

温浴施設「まねきの湯」「らんぷの湯」を全国5店舗で展開。温浴施設はローカル資本が多い中、上場会社が多店舗を展開するパターン。

スターツコーポレーション(8850)

傘下の企業が長野県の老舗「ホテル清風園」を運営。また日光においても「湯けむりの里 柏屋」を運営するなど、ホテル・旅館事業にも進出。

リゾートトラスト(4681)

会員制リゾートホテルで首位。全国各地の温泉地に宿泊施設を保有している。

小田急電鉄(9007)

東京から箱根への足として必要不可欠な存在。また箱根において宿泊施設も複数運営。首都圏からの移動の便利さもあり、箱根観光の人気が上昇中。

共立メンテナンス(9616)

全国各地でリゾートホテルを運営。寮の運営とホテルの運営が事業の二本柱となっている。

西武ホールディングス(9024)

西武秩父駅前に「西武秩父駅前温泉 祭の湯」を2017年4月にオープン。また「豊島園 庭の湯」やプリンスホテルの温泉など、様々な温泉施設を運営。

まとめにかえて

長らく不景気に悩まされた温泉地は、訪日外国人観光客の増加に加え業界内の新陳代謝の結果、新しい時代を迎えつつあります。また、日本の伝統文化である温泉は、世界に誇る日本のコンテンツであり、今後も訪日客の増加が予想される中、さらに利用者増が見込まれます。

新興国の経済発展により、世界的に見れば観光産業は成長産業に位置付けられています。温泉という、世界に知られる観光資源は、長期的にも成長が期待できる分野と言えるのではないでしょうか。

LIMO編集部