4. 著者の意向は「著作者人格権」によって守られ、何よりも尊重される
今回亡くなられた芦原さんは、彼女の作品の「著作者」にあたります。
前述した同センターによると、著作者の権利は、人格的な利益を保護する「著作者人格権」と財産的な利益を保護する「著作権(財産権)」の2つに分かれています(※)。
そのうち「著作者人格権」は、さらに下の表のような細かい権利に分かれています。
※その他「著作隣接権」を著作権の概念に含めることがあります。
4.1 公表権(著作権法第18条第1項)
自分の著作物で、まだ公表されていないものを公表するかしないか、公表するとすれば、いつ、どのような方法で公表するかを決めることができる権利
4.2 氏名表示権(著作権法第19条第1項)
自分の著作物を公表するときに、著作者名を表示するかしないか、表示するとすれば、実名、変名のいずれを表示するかを決めることができる権利
4.3 同一性保持権(著作権法第20条第1項)
自分の著作物の内容又は題号を自分の意に反して勝手に改変されない権利
今回は、芦原さんの当該作品に対する見解(思い、気持ち)と、制作側との見解に違いがあったとのことですが、上記の通り、「同一性保持権」の中に「自分の著作物の内容または題号を自分の意に反して勝手に改変されない権利」とある限り、ドラマ化に際しても、原作者の権利がまず尊重されるのです。
漫画を原作とし、そのドラマを制作するということは、多くの現場や人間の労力が必要になることは容易に想像がつきます。
そしてそれぞれの立場に、異なる事情や慣習、慣例があったことでしょう。
そうであったとしても、漫画を原作としたドラマを制作するにあたって、著作権法を遵守することは、ないがしろにできない、非常に重要なことであったと想像することができます。
5. 編集者は、盾となって作家や作品を守る存在でもある
筆者は、編集者時代、今回のようなテレビドラマの原作となる作品を手がけたことはありません。
それでも、担当した作品やそのキャラクターを、別の媒体で紹介や宣伝、モチーフにして公開したいという申し出があった場合は、著作権を侵害していないか、作家の意向にそっているか、作家の許可が得られているかを、都度確認していました。
現在は、著作権の意識も以前よりだいぶ一般に浸透しており、利用する側も、事前に許諾を取ってくれることが増えているように感じています。
権利者である作家や漫画家と、その作品を利用したい人との間に立って、時に盾になって作家を守るのは、編集者であり、ひいては出版社になります。
今後、今回のようなことが繰り返されないよう、作品にかかわる人たちが著作権について今一度よく考える機会を持つことが重要ではないでしょうか。
そして編集者は、作家、漫画家の一番の味方であってほしいと思います。