3. 2024年度「国民年金の満額」と「標準的な夫婦の厚生年金額」が決定
厚生労働省は毎年「国民年金の満額受給額」と「標準的な夫婦の厚生年金額」を発表しています。
2024年1月下旬に厚生労働省が発表した「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」によると、2024年度の年金額の例は下記のようになりました。
- 国民年金(満額):6万8000円(1人分)
- 厚生年金:23万483円(夫婦2人分の国民年金を含む標準的な年金額)
2023年度に公表された年金額の例と比較すると、国民年金と厚生年金ともに受給額が増額となりました。
年金額は近年マイナス改定が続いていたため、今回の改定は嬉しいものに思えますが、実際は物価上昇率の方が上回っています。
実質賃金が減少しているのと同様に、年金額も実質的には「目減り」となっているのが現状です。
3.1 標準的な夫婦とはどのような世帯?
厚生労働省の「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」に記載されている「標準的な夫婦」とは、どのような世帯を指すのでしょうか。
厚生労働省がモデルケースとしている「標準的な夫婦」とは、下記の要件が設けられています。
- 夫(厚生年金):平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で会社員等として40年間就業
- 妻(国民年金):40年間専業主婦もしくは自営業など
つまり、夫が厚生年金に40年間加入しているかつ、夫婦ともに40年間国民年金の保険料を支払っている(第3号被保険者の場合は支払い不要)という場合を「標準的な夫婦」と呼んでいます。
上記に該当する場合、2024年度は月に約23万円を夫婦で受け取れることになります。
4. 「標準的な夫婦」は支給月に約46万円も受け取れるって本当?
標準的な夫婦の場合、約46万円もの年金を受け取ることができます。
その理由として、年金は偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)の15日に2ヶ月分が支給されます。
つまり、支給月に「2ヶ月分」の年金が受け取れるため「月23万483円×2ヶ月分」で約46万円が振り込まれるのです。
また、年金は基本的に後払いとなっており、対象となる支給分は「偶数月の前月と前々月」であるため、2024年度の支給額改定は、次回支給日である「2024年2月15日(2023年度12月・1月分)」には反映されません。
標準的な夫婦が約46万円を受け取ることができるようになるのは、「2024年6月支給分(2024年度4月・5月分」からとなるため、こちらも覚えておきましょう。
4.1 支給月に「約46万円」は多い?少ない?
標準的な夫婦であれば、支給月に「約46万円」を受け取れることになりますが、これを聞いて「多い」と感じた方もいるかもしれません。
しかし上記の金額は「夫婦2人分」の「2ヶ月分」の収入となるため、1ヶ月の1人分として単純計算をすると、1人当たり約11万5000円となります。
月額1人当たり10万円ほどと考えると、余裕のある金額とは言い切れないでしょう。
また、厚生労働省が発表している年金額の例は「額面での金額」であり、実際にはここから税金や社会保険料が天引きされます。
そのため、額面が約46万円であっても、実際に生活費として使えるお金は少なくなる可能性が高いため、留意しておけると良いでしょう。
5. 今のうちから老後の準備をしておこう
本記事では、年金額の例として挙げられる「標準的な夫婦」の受給額について紹介していきました。
支給月に約46万円も受け取れると聞くと「多い」と感じてしまいますが、この金額は夫婦2人分の2ヶ月分の「天引き前の金額」であることから、決して多いとは言えません。
年金だけでは足りない・不安と感じる場合は、年金以外の老後対策をしておけると安心です。
近年ではiDeCoやNISAといった、国が主導となる資産運用を支援する制度も設けられているため、それらを活用しながら老後の準備をしておけると良いでしょう。
参考資料
太田 彩子