2. 純金融資産保有額5000万円~1億円未満の「準富裕層」の占める割合は全体の約6%

次は、確認した「高所得貧乏」とは逆の立場ともいえる「準富裕層」の割合をチェックしていきましょう。

株式会社野村総合研究所が行った調査では、2021年の日本における純金融資産保有額別の世帯数と資産規模を各種統計などから推計した階層を分類しています。

「準富裕層」とは、純金融資産保有額をもとに総世帯を5つの階層に分けたうちのちょうど中心に位置しています。ちなみに、純資産保有高は5000万円以上1億円未満です。

2.1 準金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数

【図表2】マーケットの分類と階層別にみた保有資産規模(世帯数)

出所:野村総合研究所「日本の富裕層は149万世帯、その純金融資産総額は364兆円と推計」

《超富裕層:純金融資産保有額5億円以上》
→9万世帯(約0.2%)
《富裕層:純金融資産保有額1億円~5億円未満》
→139万5000世帯(約2.6%)
《準富裕層:純金融資産保有額5000万円~1億円未満》
→325万4000世帯(約6.0%)
《アッパーマス層:純金融資産保有額3000万円~5000万円未満》
→726万3000世帯(約13.4%)
《マス層:純金融資産保有額3000万円未満》
→4213万2000世帯(約77.8%)

それでは、5つの階層それぞれの内訳を【図表2】で確認してみましょう。

純資産保有高5000万円~1億円未満の準富裕層は全体の6%。さらに、純資産保有高5000万円以上の準富裕層・富裕層・超富裕層は全体の8.8%を占めています。

「準富裕層」に該当するのは総世帯で約6%。325万4000世帯が該当しています。

3. 貯金額ゼロの「高所得貧乏」に陥りやすい人の共通点とは

それでは、高年収・高所得の人が「老後貧乏」に陥りやすい理由を3つ紹介します。

3.1 「高所得貧乏」の理由:高級な車・住宅などで大きな借金を抱えているから

年収1000万円以上であれば、ローンが組みやすいメリットがあります。

しかし、その分だけ高級車や高級な家など、たとえ貯金額が少なくてもローンで買えてしまうという罠があるのです。

結果的に、毎月金利を含めたローン返済金が固定費の大部分を占めるようになり、ますます貯金できなくなるという悪循環を作ってしまいやすくなります。

3.2 「高所得貧乏」の理由:必要な支払い額に無頓着だから

年収1000万円というとお金に余裕があるイメージを持つかもしれませんが、年収が増えれば税率や負担する社会保険料が高くなります。

所得税は、所得が増えると税率も上がる累進課税制。住民税を合わせて最高で約55%にのぼってしまうこともあります。

また、病気になったとき高額療養費の負担が増えたり、国からの奨学金である就学支援金などが受けられなかったりします。

そのような点を考えると、年収1000万円以上の暮らしの実情は、それほど余裕がないといえそうです。

そのような点をあまり気にせず欲しいものを欲しいだけ買う生活をして、日常の生活レベルを上げてしまうと、手元に残るお金は無くなってしまいます。

税金や出費に対するアンテナを高くする必要があるかもしれません。

3.3 「高所得貧乏」の理由:夫婦別々でお金を管理「自由に使って」いるから

夫婦がともに正社員で、世帯年収が1000万円以上というのは少なくありません。

その際、夫婦それぞれが自分のお金を管理しているケースが見受けられます。

そうなると、どうしても「自分が稼いだお金だから、どう使おうと自由」という気持ちが強くなるものです。

夫婦ともに自由気ままにお金を使うようになると世帯単位での節約意識が低くなり、家計の収支も見えにくい状況となります。

この場合、夫婦で話し合い普段の生活費を抑え、計画的に貯金を増やす選択肢をもつと変化がみられるかもしれません。

余剰金を投資など資産運用に回せるのなら、純金融資産保有額5000万円〜1億円未満の準富裕層世帯になれるかもしれません。

4. せっかく稼いだのに「高所得貧乏」にならないよう対策を

年収1000万円以上の人々であれば、収入が高いため準富裕層を目指すとういハードルは決して高くありません。

収入にあわせて生活レベルを上げ「高所得貧乏」になるのではなく、支出のコントロールをすることが大切です。

加えて節税対策、資産運用など複数対策をとれば「準富裕層」を目指すことも十分に可能でしょう。

収入が多い分だけ選択肢も多くなるはずです。最も効果的な対策はどれかしっかり選択する必要があります。

自分の価値観や目的に合った方法を試していきましょう。

参考資料

盛長 健一