2. 【65歳以上で無職の夫婦世帯】年金収入で暮らせる?
ここで、「貯蓄がなくても年金で暮らせる」と考えた方がいるかも知れません。確かに現役を引退すれば、あとは年金で暮らすというイメージがあるものです。
そこでこの章では、シニアが受給する年金の平均額も確認しましょう。
厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考にします。
2.1 国民年金(老齢基礎年金)の受給額
- 〈全体〉平均年金月額:5万6316円
- 〈男性〉平均年金月額:5万8798円
- 〈女性〉平均年金月額:5万4426円
2.2 厚生年金の平均年金月額
- 〈全体〉平均年金月額:14万3973円
- 〈男性〉平均年金月額:16万3875円
- 〈女性〉平均年金月額:10万4878円
※国民年金部分を含む
厚生年金の平均は14万3973円ですが、男女でも差があるのが特徴です。
男女別の平均額を参考にすれば、自営業の夫婦は11万3224円、会社員の夫婦は26万8753円となります。
ただし、受給額ごとの人数を見れば個人差が大きいことがよくわかります。
2.3 厚生年金の受給額ごとの人数
- 1万円未満:6万1358人
- 1万円以上~2万円未満:1万5728人
- 2万円以上~3万円未満:5万4921人
- 3万円以上~4万円未満:9万5172人
- 4万円以上~5万円未満:10万2402人
- 5万円以上~6万円未満:15万2773人
- 6万円以上~7万円未満:41万1749人
- 7万円以上~8万円未満:68万7473人
- 8万円以上~9万円未満:92万8511人
- 9万円以上~10万円未満:112万3972人
- 10万円以上~11万円未満:112万7493人
- 11万円以上~12万円未満:103万4254人
- 12万円以上~13万円未満:94万5662人
- 13万円以上~14万円未満:92万5503人
- 14万円以上~15万円未満:95万3156人
- 15万円以上~16万円未満:99万4044人
- 16万円以上~17万円未満:104万730人
- 17万円以上~18万円未満:105万8410人
- 18万円以上~19万円未満:101万554人
- 19万円以上~20万円未満:90万9998人
- 20万円以上~21万円未満:75万9086人
- 21万円以上~22万円未満:56万9206人
- 22万円以上~23万円未満:38万3582人
- 23万円以上~24万円未満:25万3529人
- 24万円以上~25万円未満:16万6281人
- 25万円以上~26万円未満:10万2291人
- 26万円以上~27万円未満:5万9766人
- 27万円以上~28万円未満:3万3463人
- 28万円以上~29万円未満:1万5793人
- 29万円以上~30万円未満:7351人
- 30万円以上~:1万2490人
国民年金は一律の保険料を払いますが、厚生年金は収入に応じた保険料を支払います。また、加入期間によっても年金額は異なります。
それぞれの働き方や収入によって実際の年金額は変わるため、夫婦の年金見込額をねんきんネットやねんきん定期便などで確認することがまず1歩となります。
その上で、「夫婦で年金15万円なので厳しい」「夫婦で年金26万円になるので大丈夫そう」のように、それぞれでシミュレーションすることが必要です。
ただし、「支出がどれくらいになるかわからない」と感じるかもしれません。多くの方は今の支出より減るので、まずは現在の支出額を把握し、その何割減で生活できるのかを考えるステップになります。
参考までに、今のシニアの平均的な支出額も紹介します。
3. 【65歳以上で無職の夫婦世帯】支出額の平均はいくら?
総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2022年(令和4年)平均結果の概要」より、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支を見ていきます。
3.1 65歳以上・夫婦のみの無職世帯「月の生活費」
- 月の収入:24万6237円(うち社会保障給付22万418円)
- 月の支出:26万8508円(うち消費支出23万6696円)
- 月の収支:▲2万2270円
平均では、恒常的に2万2270円の赤字です。2万円程度の赤字なら、実際の家庭では収入額に合わせてやりくりするかもしれませんね。
消費支出の内訳は次のとおりです。
- 食料:6万7776円
- 住居:1万5578円
- 光熱・水道:2万2611円
- 家具・家具用品:1万371円
- 被服及び履物:5003円
- 保健医療:1万5681円
- 交通・通信:2万8878円
- 教育:3円
- その他:4万9430円
- 非消費支出:3万1812円
上記をもとに、「我が家でもっとかかる費用」「我が家ではここまでかからない費用」を差し引きし、支出の目安額をつかむのもひとつです。
ただし日常的な支出だけでなく、医療費や介護費用、住宅の改修費用なども見込んでおきましょう。
もし赤字になる場合、リタイヤではなく仕事による収入を得るのか、それでも貯蓄を切り崩して生活したいのか、夫婦でしっかり考えておく必要があります。
4. 年金だけに頼らない老後の備え
老後資金に限らず、貯蓄で大事になってくるのは目的や目標を定め、それに対する手段を選んでいくことです。
例えば、受験勉強をするにも志望校があり、受験までの期間があり、どうやって勉強していくのがいいのか。これは皆さんが体験したことではないでしょうか。
老後資金に関しても同様です。まずはどんな生活が良いのか考え、それに対する必要資金を考え、どういう手段で目的を達成するかが大事です。
その手段のひとつとして、NISAやiDeCoも挙げられます。
まずは手段の前の目標を決めていきましょう。
人生100年時代と言われる昨今。皆さんの長いセカンドライフを楽しく過ごすために一歩進んでみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2022年(令和4年)平均結果-(二人以上の世帯)」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2022年(令和4年)平均結果の概要」
渡邉 珠紀