認知症の親を自宅で介護するのは大変なことで、介護を担う子どもが「もう限界……」と感じることも多いのではないでしょうか。
子どもの心身の健康を考えるなら、まずは親を介護施設に預けることを検討するようにしましょう。
その際、認知症の親が持っている「年金月額5万円+貯蓄1000万円」を使って施設を探す場合、どのような施設に入ることができるのでしょうか。
1. 親の口座にまとまったお金があっても「認知症」の場合お金が引き出せない……。
認知症の親が介護施設に入居するには、まとまったお金が必要です。かかる費用は「親の貯蓄で賄いたい」というのが子どもの本音なので、親が「年金月額5万円+貯蓄1000万円」あるのは心強いといえるでしょう。
とはいえ、親名義の口座からお金を引き出すには、本人(親)が「引き出したい」という意思を伝えなければいけません。しかし、親が認知症であるなら、そのような意思を示すことができず「お金があっても使えない……」という状態になってしまいます。
銀行側からは、認知症になった親の口座からお金を引き出す方法として、裁判所が認めた「成年後見人」を立てることを勧められるでしょう。
成年後見制度とは、知的障害・精神障害・認知症などのようにひとりで契約やその他の手続きが難しい方が、財産管理や契約行為を成年後見人にサポートしてもらう制度です。
1.1 成年後見人には親族でも大丈夫?手続きにはどのくらい期間がかかる?
認知症の親に成年後見人を付けるには、家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。
成年後見人には、家庭裁判所が、本人への保護・支援の必要性、個々の事情を判断して、適した人を選任します。具体的には、親族、法律・福祉の専門家、その他の第三者、福祉関係の公益法人などの中から選ばれます。成年後見人には親族もなれますが、あくまでも家庭裁判所が適任であると判断した場合に限ります。
もしかしたら、許可されないことがあったり、後見人になったとしても、正しく後見業務ができているかを監督する「監督人」が付いたりすることがあります。
なお、誰を成年後見人等に選任するかという家庭裁判所の判断については、不服申立てをすることができません。
また、成年後見人の申し立てを家庭裁判所に行ってから、さまざまな手続きを経て法務局での後見登記をされるまで一般的に3~5か月ほどかかります 。
このように、親が認知症であれば、たとえ親の口座にまとまったお金があったとしても、簡単に引き出せません。子どもが「在宅介護はもう限界…」となってから諸々の手続きを行うのではなく、ある程度の段階で、子どもが親の金銭管理をする状態に備えておくことが必要でしょう。