3. 国民年金の受給額「ひと月いくら?」
次に1階部分である「国民年金(基礎年金)」を見てみましょう。
- 男性:5万9013円
- 女性:5万4346円
全体:5万6368円
また、受給権者の分布を1万円刻みで見ると、以下のようになります。
- 1万円未満:7万27人
- 1万円~2万円未満:28万4152人
- 2万円~3万円未満:90万3006人
- 3万円~4万円未満:274万9550人
- 4万円~5万円未満:463万6048人
- 5万円~6万円未満:791万730人
- 6万円~7万円未満:1500万3006人
- 7万円以上:187万2466人
男女の差はほとんどなく、おおよそ5万円台となっています。ちなみに、国民年金を40年間納めた場合に受け取れる満額は、6万5075円(2021年度の月額)。満額に近い金額を受け取っている人が多いようですね。
とはいえ、この金額だけで老後の暮らしを成り立たせることはかなり難しいと言えるでしょう。自営業やフリーランスなどで、老後に受け取る年金は国民年金のみとなる場合は、早い段階で老後を見据えた貯蓄計画が必要ですね。
あわせて、付加保険料の納付、もしくは国民年金基金への加入などで年金額を増やす工夫を取り入れてみると良いかもしれません。
4. 【厚生年金】一般的な夫婦世帯の年金月額は?
さて、2023年1月20日、厚生労働省が令和5年度(2023年度)の公的年金額の引き上げを発表しました。
2023年度に新たに老齢年金を受け取り始める場合、標準的な夫婦世帯のひと月の年金額は「21万9593円」。標準的な夫婦世帯の目安となる年金が約22万円と冒頭でお伝えしたのは、この数字です。
表中に「夫婦2人分の老齢厚生年金を含む標準的な年金額」と但し書きがあります。これは、厚生年金のモデル夫婦が受け取る年金額で「平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で、40年間就業した場合の、老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の受給額を指します。
ひらたくいうと、「40年間ずっと、夫が標準的な収入のサラリーマンで、かつ妻が専業主婦だった」ケースなのです。専業主婦世帯が多数派であった「今の年金受給世代」にとっては一般的といえる形態といえますね。
しかし、働き方の多様化が進み、共働き世帯が増えるこんにち。いまの現役世代が年金を受給する頃には、この「標準的な夫婦世帯」の定義も変化していることが考えられるでしょう。
とはいえ、今のシニア世代が受け取る年金額を知ることは、老後の暮らしをイメージする上である程度の参考となりそうです。
4.1 夫婦の老後には、ひと月いくら必要?
ちなみに、生命保険文化センターが行った意識調査では、夫婦老後のひと月の生活費として必要な金額は「最低日常生活費」で23万2000円、「ゆとりある生活費」で37万9000円という結果に。
老後に受け取る年金額には当然個人差・世帯差があります。とはいえ、「年金だけ」で老後の生活を過ごせる世帯は決して多くはないでしょう。年金だけに頼らないための「お金の準備」が必要になってきますね。
年金だけに頼らない!自分の将来を自分で守るために
今回は、いまの年金受給世代が受け取る年金額の最新データを見たあと、「標準的な夫婦」が受け取る年金額についても見てきました。
年金収入額には、世帯差、個人差があります。ひと月の生活費がいくらかかるかも、健康状態やライフスタイルによって大きく変わるでしょう。
とはいえ、年金だけを頼りに暮らしていける世帯は決して多くはないでしょう。少子高齢化が進み、年金制度の支え手である現役世代が減っていきます。いまの年金水準がこの先もずっと続くとは限らないわけです。
これから先の長寿時代を見据えた場合、「年金は老後生活を支える一つの手段にすぎない」と考えるのも賢明であるといえそうです。
貯蓄の一部を「資産運用」に回し、お金に働いてもらうしくみを作るのも一案です。
もちろん、必要なときにいつでも引き出せる預貯金をしっかり確保しておく必要はあります。しかし、超低金利が続くいま、銀行などの預貯金だけではお金を増やすことには繋がりにくいと言えるでしょう。またインフレリスクも気になります。
長寿時代を見据えたマネープランを作る上で欠かせないことの一つが「資産の寿命を延ばす」視点です。そこで、資産運用でお金を育てる工夫は、選択肢の一つとなるでしょう。
2022年度からは高校家庭科で「資産形成」の授業がスタートしました。iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)やNISA制度の改定・拡充も進むいま。「資産運用」は私たちの暮らしにとって、実に身近なものになりつつあります。
長寿時代を生きる私たちに求められているのは、「自助努力」によって自分の将来をしっかりと守っていく視点であるといえるでしょう。
参考資料
- 日本マクドナルド「【1月16日(月)~ 価格改定対象商品例(店頭価格)】
- 厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「令和4年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」
荻野 樹