子どものいる夫婦が離婚する場合、子どもの親権を決めると同時に養育費についても話し合うことになります。養育費は子どもを育てていくうえで大切なものなので、適正な金額を受け取れるのが理想です。
しかし、支払う方としてはできるだけ負担のない金額にしたいと考える一方、受け取る方はできるだけ高額をもらいたいと考え、合意を得るのが難しいケースもあります。
そのようなときに、養育費の相場を知ると合理的な話し合いができる可能性があります。
この記事では、養育費の相場を紹介するとともに、金額を決める際に参考にしたい「養育費算定表」について解説していきます。
1. 養育費は「2万円超4万円以下」が最も多い
最高裁判所の「令和4年 司法統計年表 家事編」 によると、夫から妻へ支払われる養育費で最も多いのは「2万円超4万円以下」の間です。
下表は、養育費ごとの割合をまとめたものです【図表1】。
上表からもわかる通り、「2万円超4万円以下」の件数が最も多く、全体の3割を占めています。
2番目に多いのが「4万円超6万円以下」で25.6%、3番目が「6万円超8万円以下」で13.4%となっています。
ただし、養育費は子どもの人数や年齢によっても異なるため、これらの結果がすべてのケースにおいて妥当な金額というわけではない点にご注意ください。
なお、厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果」でも、養育費についての調査が行われています。調査結果によると、夫から妻へ支払われる養育費の平均月額(養育費の額が決まっている世帯)は5万485円です。最高裁判所の発表とおおよそ一致していることがわかります。
2. 「養育費算定表」を活用して適正金額を知る
夫婦間の話し合いで養育費について合意が得られないときには、「養育費算定表」を元に金額を決める方法があります。
2.1 養育費算定表とは
養育費算定表とは、夫婦それぞれの収入や子どもの人数・年齢などをもとに、標準的な養育費を算定できる表のことをいいます。実際に、家庭裁判所でも養育費についての調停を行う際に利用されているものです。
夫婦間の話し合いで必ず利用しなければならないものではありませんが、裁判所でも利用されているものであれば、お互いに納得のいく金額で合意できる可能性があるでしょう。
なお、養育費算定表は裁判所の公式サイトで誰でも閲覧可能です。
養育費算定表は、子どもの人数(1人〜3人)と年齢(0歳〜14歳、15歳以上の2区分)によって表1〜9まであります。表の縦軸は養育費を支払う方の年収が、横軸は受け取る方の年収が示されており、双方の交わる箇所が標準的な養育費となっています。
2.2 養育費の例
では、養育費算定表をもとに、いくつかのケースで標準的な養育費を見てみましょう。
【ケース1】
- 夫:会社員(年収500万円)
- 妻:パート(年収75万円)
- 子ども:1人(6歳)
養育費算定表(表1)養育費・子1人表(子0〜14歳)より、4〜6万円が相場となります。
赤い点の場所が該当箇所です。養育費は4〜6万円と記載されています。
【ケース2】
- 夫:会社員(年収600万円)
- 妻:専業主婦(年収0円)
- 子ども:2人(8歳、5歳)
養育費算定表(表3)養育費・子2人表(第1子及び第2子0〜14歳)より、10〜12万円が相場です。
【ケース3】
- 夫:自営業(年収800万円)
- 妻:パート(年収100万円)
- 子ども:2人(16歳、12歳)
養育費算定表(表4)養育費・子2人表(第1子15歳以上、第2子0〜14歳)より、18〜20万円が目安となっています。
このように、夫婦の年収や子どもの人数・年齢で養育費の目安を知ることができます。ただし、あくまでも目安であるため各家庭の状況も考慮して決めるようにしましょう。
3. まとめにかえて
養育費の具体的な金額は、夫婦の話し合いで合意を得ることが難しいケースがあります。しかし、養育費は子どもを育てていくうえで大切なものなので、お互いが納得できる金額に決めたいものです。
話し合いがすすまないときなどは、裁判所でも利用されている養育費算定表を活用しましょう。夫婦それぞれの年収や子どもの人数・年齢などによって細かく記載されており、標準的な金額を知る目安となります。
それでも話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てて速やかに解決しましょう。
参考資料
木内 菜穂子