3. 不払い対策には公正証書の作成が重要

養育費について夫婦間で話し合い、合意を得た場合には、「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成することをおすすめします。

公正証書とは、個人からの依頼により公証人が作成する公文書のことで、強力な証拠力を持っているものです。公証役場で保管されるので、紛失や内容の書き換えなどを防ぐことができます。

公正証書作成時に、養育費の取り決め内容のほかに、「不払いをした場合にはただちに強制執行を行う」ことも記載しておく(「強制執行認諾文言」といいます)と、家庭裁判所で調停や審判の手続を経なくても強制執行をすることが可能です。

公正証書を作成しなかった場合は、強制執行までいくつもの段階を経る必要があります。まず、家庭裁判所に養育費調停の申し立てをして調停員を介した話し合いをします。

その結果、合意が得られなければ審判手続きに移行し、裁判所に判断してもらうことになります。

調停や審判で支払うことが決まったにもかかわらず支払いがない場合、裁判所に履行勧告の申し出をして、それでも支払われない場合に強制執行が行われるのです。

公正証書がない場合は、このように数々の手続きが必要になります。

養育費の不払いにおける強制執行では、給与や預金、不動産などの財産を差し押さえが行われ、それらを強制的に養育費の支払いに充てます。

ただし、給与を差し押える場合は、給与から社会保険料や税金などを差し引いた手取り額の2分の1が上限です。

また、差し押さえできるのはこれまでの不払い分だけでなく、将来分も可能です。将来分は、その時期が到来した後に受け取れます。

たとえば、1月31日受け取り予定の養育費は、1月25日支給の給与からは受け取れず、2月25日支給の給与から受け取るということです。

4. まとめにかえて

元夫から現在も養育費を受け取れているシングルマザー世帯はわずか28%に過ぎません。

かつて受け取ったことがあっても現在は受け取っていない世帯もありますが、一度も受け取ったことがない世帯が半数以上を占めています。

養育費を支払うことを決めたにも関わらず不払いが起きたときは、ご自身で直接請求することもできますが、家庭裁判所に養育費調停の申し立てをする方法もあります。

さらに、離婚時に公正証書(「強制執行認諾文言」付き)を作成しておけば、未払いが起きても強制執行がすみやかに行えます。

公正証書は強い証拠力を持っているので、後に「言った言わない」の争いにならないよう、公的な文書として残すことが大切です。

参考資料

木内 菜穂子