2018年2月2日に行われた、2018年3月期第3四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料
スピーカー:ヤフー株式会社 代表取締役社長 最高経営責任者 宮坂学 氏
2017年度 第3四半期 業績ハイライト①
宮坂学氏(以下、宮坂):それでは、ヤフー株式会社の2017年度第3四半期の決算の説明をしたいと思います。
まず、連結の業績であります。売上高が2,307億円で、前年同四半期比で4.3パーセントの伸びです。営業利益は528億円、前年同四半期比で2.0パーセントの伸びです。広告関連の売上高は前年同四半期比で6.6パーセントの増加で、eコマースの流通総額は同14パーセントの伸びとなりました。
2017年度 第3四半期 業績ハイライト②
ハイライトです。メディア事業は、検索連動広告の売上高が前年四半期で6パーセントを超える成長となりました。もう1つ、スマートフォンのトップページにプレミアムの動画広告は配信できていませんでしたが、年末から配信を開始できるようになっております。
コマースの事業は、ショッピングの取扱高が過去最高を更新することができて、カードの事業も非常にうまくいっております。
売上高
売上高の推移ですが、こんな感じで伸びてきています。
売上高構成
売上高を分解したものが、こちらになります。見ていただければわかると思います。
営業利益
営業利益の伸びも、このようになっております。
営業利益の増減要因
営業利益の増減の要因でありますが、去年と比べてみて、事業の成長などのいろんな要因で約80億円増えて、eコマース取り扱いに関する投資、それからデータドリブン化投資等々で投資をして、最終的なできあがりが528億円となっております。
販売促進活動
eコマースのうちの販売促進活動は、ショッピングに半分、会員・オークション・決済金融に半分という感じで配分をして、投資を続けています。
Daily UB(デイリーユニークブラウザー)数
サービスの利用動向です。まず、やはりヤフーは、使ってもらってなんぼみたいな会社でございますから、利用者の方が順調に増えているのが大事です。
いろんなデバイスでたくさんの方が使ってもらってるんですが、このデイリーユニークブラウザーで見ると8,900万と、だいたい1日約9,000万のユニークブラウザーの方がアクセスしており、延べ人数みたいに捉えてもらうといいのですが、延べ9,000万人ぐらいが毎日使うほど伸びてきました。
スマートフォンがさらに拡大していて、スマートフォンの比率がまた上がってきています。
月間アクティブユーザーID数
この9,000万のユニークブラウザーについては、トラフィックの体質転換を引き続き進めています。これからのことを考えると、ログインしているトラフィックの方が質が高いですから、ログインの推進をやっています。だいたい、月間で4,000万人を超えるぐらいログインで使ってもらえるぐらいになってきました。
アプリ合算DAU(デイリーアクティブユーザー)数
もう1つのトラフィックの体質転換ですが、使ってもらうときに、ブラウザーではなくてアプリで使ってもらおうとしています。一番いいのはアプリかつログインですが、アプリで使ってもらうためのトラフィックの体質転換も比較的うまくいき、前年で比べると24パーセント増えて、4,200万を超えるアクティブユーザーになってきました。
広告関連売上高
トラフィックの量の成長、ならびに質の転換の上で広告事業をやっています。
(スライドを指しながら)広告はディスプレイと検索で、それぞれこんな感じで伸びてきています。
スマートフォン広告売上高
スマートフォン広告が引き続き事業を牽引していて、15パーセント伸び、430億円まで届いてきました。
スマートフォン版動画広告 ロードマップ
今後、力を入れようとしているものの1つが、動画での広告です。これだけトラフィックが増えてきているわけですから、ビデオによる広告配信を進めていこうとがんばっています。2016年度の3月に、アプリではインフィードの動画広告が配信できるようになっています。
年末に、ブラウザー版のプレミアムの動画広告の配信ができるようになりました。2017年度の末から2018年度はじめぐらいにかけて、タイミングを見ながら、インフィードの動画広告のブラウザー版を投入する予定になっています。
その後、2018年度の中盤から後半ぐらいまでに、プレミアムの動画広告のアプリ版を出していこうとしています。年度末から比べれば、動画の配信できる供給在庫の数がかなり増えるというロードマップです。
スマートフォントップページ(ブラウザー)プレミアム動画広告
2017年度の12月に配信した、スマートフォンのトップページのブラウザー版でのプレミアム動画広告は、イメージをこちら(スライド)にお見せしています。このような感じで、ブランディングに効く動画広告商品を投入しております。
動画視聴時間
ここから、メディア事業のご紹介をします。動画の視聴時間を伸ばすことに力を入れています。(視聴時間を)約4倍ぐらい伸ばすことができました。
PC版「Yahoo! JAPAN」トップページに動画タブを追加
スマートフォン以外、パソコンでもヤフーを使う人がまだ多いです。パソコンはスマホと違って、100パーセントと言っていいぐらいブロードバンドで見ている方が多いので、パソコン(に表示される広告)を全部動画化にしていこうと実験しています。ヤフーのPC版のトップページに、動画タブを付けて動画を見れるようにしようとしています。
今までは動画と写真は分けて、動画は動画コーナーで見るものとしてきましたが、これからの時代はスマホもPCも、動画も写真も一緒です。特別な動画コーナーに行って見るものではなくて、普通に見るものに完全になってきています。いろんなところで、こういった動画の枠を増やすことを考えています。
月額有料会員ID数
コマース事業の説明です。
コマースで一番大事なものの1つは、プレミアム会員、月額有料会員を増やすことだと思います。ヤフーのコマースは会員によって牽引されていますので、まずこの分母になる会員が増えているのかが非常に大事なんです。去年と比べると43パーセント増えて2,511万人と増やすことができました。
ショッピング事業取扱高
そういった旺盛な会員の伸びの上で、コマース事業のショッピングは、前年と比べると28パーセント伸び、1,800億円を超えるまでに成長してきました。
いい買物の日 取扱高実績
とくに特筆すべきことは、11月の「いい買物の日」に、単日売上が、去年と比べると46パーセント増加し、着実に売る力が付いてきているのがわかると思います。
「Yahoo!ショッピング」購入者数
これは瞬間風速の力ですが、もうちょっと長い目で見ると、買ってくださる方の数が増えていることが成長を牽引する、非常に良い構造になっていると感じています。2013年第3四半期に発表しました「eコマース革命」を始めたときは、ヤフーだけが流通総額でマイナスでしたが、とにかくまず商品の数を増やそうとしました。
そのためには、出店料・出品料を無料化しました。ヤフーはお客さまがもともと見るわけだから、品数が増えれば、買う人の数が増えるというシナリオの中でやってみたわけです。時間が経つにつれて、ストアの数が一番になり、商品数が一番になり、そして今では買ってくださる人の数が、eコマース戦略発表のときに比べると2倍以上になってきたことで、着実にシナリオどおりだと思います。
(スライドを見ながら)このグラフの上の濃いところが新規のお客さまで、薄い方が既存の方です。既存が着実に積み上がっているのが見てとれると思います。いろんなキャンペーンとか「いい買物の日」といったセールを通じて、新規のお客さんが入ってくださって、それが着実に継続する構造ができているのが、このグラフから見てとれると思います。
「Yahoo!ショッピング」取扱高
「Yahoo!ショッピング」は、「Yahoo!プレミアム」会員による流通の比率が急速に増え、75パーセントの流通総額が、今では「Yahoo!プレミアム」会員による流通になっています。
事実上「Yahoo!ショッピング」は会員制のeコマースです。特定の会員は「Yahoo!ショッピング」で買ってほしいというマーケティングをしていますが、非常にうまくいっていると思います。
ソフトバンク会員による「Yahoo!ショッピング」取扱高推移
一つの例ですが、ソフトバンクのお客さまは、昔はあまり「Yahoo!ショッピング」で買う人少なかったんです。ソフトバンクのお客さんであればポイントがお得にになるキャンペーンを始めてみたり、スマートログインさえすれば「Yahoo!プレミアム」会員に自動的になれるといったことを始めた以降は、非常に伸びてきました。
ソフトバンクのお客さんに「Yahoo!ショッピング」で買い物を楽しんでもらうケースが、1年間で4倍くらいに増えました。
ソフトバンク会員の「Yahoo!ショッピング」利用状況
ただ、まだまだ膨大な伸びしろがあると思います。ソフトバンクモバイルのお客さまのうち、スマートログインを設定されている方は、つまり「Yahoo!ショッピング」で買い物をすると、いろんな特典が得られるお客さまです。
そのうち、だいたい3割くらいしか、まだ「Yahoo!ショッピング」で買い物をしていない。残りの方は、まだ他で買い物をしている可能性が非常に高いので、丁寧に施策していけば、まだまだ伸びしろがあると思っています。
ショッピング広告売上高
流通相場が伸びても、現在のビジネスモデルは、取引に対する手数料などは取っていません。最終的に広告売上につなぐ必要があるわけですが、この広告売上も順調に伸びていて、32パーセントの伸びで77億円です。もうじき100億円を突破するほどまで伸ばすことができました。
「Yahoo!ショッピング」取扱高における ショッピング広告テイクレート*1およびポイント費用比率*2の推移
ときどき、「『Yahoo!ショッピング』が伸びているのはわかるが、ポイントをばらまいているから伸びてんじゃないのか」と心配する声もあります。
(スライドを指しながら)この推移線は流通総額に占めるポイントの費用比率になります。上の赤い方は、流通総額に占める広告の売上の比率になります。
今は流通総額に占める広告の売上が安定的に高くて、無理をしてポイントを出して(会員を)取っているのではない状態です。それでもこれだけ高い伸びをできるようになってきました。
オークション関連取扱高
今度はオークションの事業です。
オークションも堅調に伸びていて、2,578億円にまで流通総額を伸ばすことができました。とくに力を入れたりしている施策としては、「Yahoo!マネー」を上手に有効活用しながら伸ばしていくことで、引き続きがんばっていきたいと思います。
「Yahoo!ウォレット」の利用を促進
最後に、決済金融に触れたいと思います。
決済金融で何をやっているか、1枚の図にしてみました。今、ショッピング・オークション・トラベルなんかを通じて、ヤフーの流通総額を増やしていこうと取り組んできて、うまく伸びています。
流通総額で決済するときに、「Yahoo!ウォレット」を使っていただこうと、流通総額に占めるウォレットシェアの比率を上げる努力をしています。そして次に、ウォレットシェアだけではなく、ウォレットの中で、他社のクレジットカードとか銀行決済ではなく、ヤフーの「Yahoo!JAPANカード」や「Yahoo!マネー」を使ってもらう比率をあげようとしています。
これは社内的にはインハウス決済比率と呼んでいますが、全体として「Yahoo!ウォレット」比率を上げます。流通に占める「Yahoo!ウォレット」比率を上げることと、その「Yahoo!ウォレット」の中におけるインハウスの比率を上げることを、今決済チームでやっています。
「Yahoo!ウォレット」口座数
ではこの「Yahoo!ウォレット」はどういうふうに伸びているのかと言うと、堅調に伸び、約4,000万IDの「Yahoo!ウォレット」の口座が開設されています。ちょうど、月間のアクティブIDと同じくらいの数字になってきたなと思います。
「Yahoo!ウォレット」取扱高
その「Yahoo!ウォレット」の数が増えても、使われていないとあまり意味がないのですが、それも順調に伸びています。前年と比べると16パーセント「Yahoo!ウォレット」の取扱高が増えています。
クレジットカード有効会員数
「Yahoo!ウォレット」の中でもクレジットカードで決済される方が非常に多いです。
クレジットカード取扱高
「Yahoo!JAPANカード」の取扱高も順調に伸びており、前年と比べると1.5倍の伸びを記録することができました。
インターネットサービスはパーソナライズの戦い
最後にテクノロジーのパートに触れたいと思います。
現代のインターネットは、100人がいれば100人みんなが違う情報を見る時代になってきていると思います。そういう意味で、いいサービスは何かと言うと、自分にぴったりのパーソナライズをしてくれるサービスです。このパーソナライズのフィット感をめぐる戦いが、インターネットで起きていることではないかと思います。
それは「Yahoo!」で言うと、タイムラインだったり、広告だったり、eコマースのレコメンデーションだったり、動画のおすすめだったり、ニュースのおすすめだったりします。ありとあらゆるレコメンデーションを、パーソナライズのエンジンを使って行うことです。我々のライバルの企業さんも同じ状況だと思います。
すべての企業さんがこのパーソナライズドエンジンの性能を上げて、ぴったりの広告、ぴったりのeコマース、ぴったりのニュース、そしてビデオを配信していこうと。こういったパーソナライズ競争が世界的な規模で起きていると思います。このパーソナライズドエンジンのエネルギーに当たるものはデータであると。
データをたくさん集めて、いいパーソナライズドエンジンを作って回すと、タイムラインとかeコマースのレコメンドといったかたちで出力されるというふうに、現代のインターネットはなっていると認識しています。
競合が真似できないエンジンを作り収益の拡大を目指す
そういった競争の中で我々の特徴は何なんだろうかと思うと、1つは、やはり他社にないものとしては、エネルギーの多様性です。エネルギーミックスにあるのではないのかと自分たちでは考えています。
これは我々はマルチビッグデータと言っています。広告とか、eコマースとか、ニュース・ビデオの配信をするときに、非常に有意義になりそうなデータをたくさん持っています。
量だけじゃなくて、種類をたくさん持っていると。そしてしかも、それらがたった1つのIDで全部運用管理されているところが、他の企業さんにはない、非常にユニークな点ではないかと思っています。技術開発の方向性としては、この多様なエネルギーミックスをもっと多様にできるように増やしていくことです。
そしてもう1つはこのエネルギーミックスを活かした、パーソナライズドエンジンを作り上げていくことです。現状、我々のパーソナライズドエンジンは、残念ながらミックスしたエネルギーを使うようになっていません。基本的には、メディアで見たものは、メディアで使う。eコマースで見たものは、eコマースで使うとなっています。エンジンが1つになっていないんです。
長い目で見れば「Yahoo!JAPAN」の差別化のポイントは、やはり、このデータにあるのではないかと思っています。
今後のデータ活用の取り組み
そういったデータ活用の取り組みを、(2018年)2月6日火曜日にメディア向けに発表する予定になっています。
IRの情報ページからもリンクを掲載する予定になっています。ぜひご覧いただければと思います。
以上が、私からの説明です。ありがとうございます。