2025年には「団塊の世代」の全てが後期高齢者となります。この世代は約800万人いることからも、社会保障費の増大が懸念されています。

また、彼らの子どもの多くが「就職氷河期世代」にあたることから、各家庭における介護費用などお金まわりのことも懸念されています。

団塊の世代には1947~1949年生まれの人が該当し、2024年時の年齢は75~77歳です。

この世代は日本における第一次ベビーブームの時期に生まれました。好景気だけではなく、不況も経験していますが、高度経済成長期を知っていることからも「努力は報われる」と考える人も多いようです。

そして、団塊の世代の親をもつ人の多くが就職氷河期世代に該当します。就職氷河期世代は1974~1983年生まれで、2024年時の年齢は41~50歳で団塊ジュニアとも呼ばれています。

この世代は大学の門戸が狭く、かつ優秀な学生であっても経済不況の影響を受けて就職先がないという状況に直面していました。

現在においても氷河期世代の問題がメディアで取り上げられ、この世代を対象にした支援を行う自治体などもありますが、即自的な問題の解決は難しいというのが現状でしょう。

しかし、SNSなどを中心に「氷河期世代の親世代は資産形成できている」「親が経済的にゆとりがあるだけよい」といった意見も多く見受けられます。

本記事では氷河期世代の親世代がこのように言われる理由を見た上で、70歳代の貯蓄額を見ていきましょう。

1. 氷河期世代をうらやむような若者もいるが

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20年ほど前に、山田昌弘による「パラサイト・シングルの時代」(1999)が出版されました。

本書では成人しても実家で生活する息子や娘が「生活コストの負担なき立場」にあり、収入を得るための労働や家事労働の負担をほとんどしていない状況が問題視されています。

また、「基礎的生活コスト」の負担がないことから、実家で暮らす若者が「ブランド消費の主役」であることや、職業を選り好みできる立場にあることなども指摘しています。

一方、現代の若者について、ブランド品、車、海外旅行などお金がかかるものに関心を示さない傾向にあると巷ではよく言われています。

また、Z世代(1990年代後半から2012年頃に生まれた世代)の中には就職氷河期に該当する親を持つ人も含まれており、彼らは親世代の厳しい経済状況も間近で目にしています。

Z世代の多くが「ガチャ」という言葉を頻繁に使い、親の経済力や人格、在住エリア、容姿など本人の力ではどうしようもない部分で人生が左右されると考えています。

この世代において「努力すれば報われる」といった価値観を持つ人はそう多くないのかもしれません。

若年層の中には親の経済力のなさや、自分たちの手取り額の少ない状況を踏まえて、経済力のある親を持つ傾向にある就職氷河期世代をうらやむような人もいます。

しかし、就職氷河期世代は大学入試においてAO入試のような抜け道もなく、厳しい競争を強いられていました。こうしたことからも、この世代には学力が高く、教養もある優秀な人が多くいます。

しかし、就職活動時には求人がほとんどない状況であったばかりか、従業員の働きやすさに重点を置く企業は現在と比べるとかなり限られていました。

また、当時においても自分で稼いだ給与を全て自分の娯楽や趣味などに使える人は一部にすぎません。

近年の若者は「ガチャ」という言葉に表れているように個人の力では太刀打ちできない物事があることを理解していますが、就職氷河期世代も「経済不況」という個人の力ではどうにもできない状況があることをよく知っているのです。