年末年始の帰省で久しぶりに両親に会って、さまざまな健康状態が気になった方もいるのではないでしょうか。たとえば、会話をしていて聞き返してくることが多くなったり、テレビのボリュームが以前よりも大きくなっていたりすると「耳が遠くなってきているのではないか」と心配になることでしょう。
加齢による聞こえの低下は避けられませんが、できればなんとかしてあげたいもの。解消するための手段として真っ先に思いつくのは補聴器の装用ですが、高価であることや当の本人が乗り気にならないなどの理由からなかなか普及していないのが現状です。
それなら音をもっと聞き取りやすくすればよいのではないか。そんな逆転の発想で開発されたのが、サウンドファンが展開する「ミライスピーカー」です。2020年に一般家庭向けとして投入した「ミライスピーカー・ホーム」は累計約20万台を売り上げ、2023年10月には新モデルも発売されました。
1. 【ミライスピーカー】音の聞こえがよくなるメカニズムとは
ミライスピーカーはテレビCMなども展開しているので、見たことや聞いたことがあるという方は増えているようです。ただ「なぜ聞こえやすくなるのか」という具体的なメカニズムまで理解している方は少ないかもしれません。
ミライスピーカーの最大の特徴といえるのが、音を発生させる振動板の形状です。一般的なスピーカーは円錐形になっていますが、ミライスピーカーは湾曲した独特の形状になっています。
曲面にすることで変わるのは「音波」です。従来のスピーカーより高音域で広範囲にしっかりと音を届ける音場が作られ、それが聞き取りやすさにつながります。同社はこの「曲面サウンド」で特許も取得しています。
メカニズムとしては実にシンプル。それゆえ、振動板を曲面にするだけで本当に音が変わるのかという疑問を持たれるかもしれません。筆者もその一人だったのですが、サウンドファンに取材した際に提供されたデモキットを使って「なるほど」と納得することができました。
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出所:筆者撮影
デモキットの中身は下敷きとオルゴール。デモでは下敷きの端にオルゴールを当てて音を鳴らします。下敷きをまっすぐにした状態では、オルゴールの音量は単体で鳴らしたときと変わりません。しかし、下敷きをぐにゃっと湾曲させていくと、一気に音量が増幅されます。
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出所:筆者撮影
下敷きは一般的なプラスチック素材で特殊な素材は使われていません。ミライスピーカーは単純な物理法則をうまく活用し、聞き取りやすい音を生み出しているわけです。
知ってしまえば簡単なメカニズムですが、スピーカーとして求められる良い音を出すためには曲がり具合に絶妙な調整が求められます。実際にオルゴールと下敷きのデモでも曲げすぎると音がひび割れてしまいました。ミライスピーカーの凄さはまさにこのバランスを試行錯誤の繰り返しで最適化し、良い音を聞こえやすくしている点にあります。
2. 【ミライスピーカー】よりテレビにフィットする新製品が登場
初号機となるミライスピーカー・ホームは手元に置けるコンパクトなサイズが魅力でしたがモノラルだったため、ステレオモデルを求める声もありました。そんな期待に応えて2023年10月に登場したのが「ミライスピーカー・ステレオ」です。
本製品のプロトタイプ自体はミライスピーカー・ホームの発売前からあったそうですが、最適な音のバランスをとるのが難しく、3年以上に渡って約80パターン以上の試作を行い、ようやく完成に至りました。
モノラルからステレオになったことで、ただ聞き取りやすいというだけでなく、音楽や映画の臨場感も感じられるようになりました。また光端子を追加し、光デジタルケーブルを使ってテレビと接続することができるようになったため、ノイズや音質劣化も少なくなっています。
形状はバータイプになったことでよりテレビにフィットしやすくなりました。通常のテレビスピーカーよりやや厚めなので、テレビの前に設置する場合は多少工夫する必要がありそうですが、室内に馴染みやすいデザインです。
3. 【ミライスピーカー】目的特化の製品である点に注意
実際にミライスピーカー・ステレオをサウンドファンに借りて使用してみました。接続は電源ケーブルをコンセントに、光デジタルケーブルをテレビにつなぐだけと非常に簡単です。音声ケーブルも付属しているので、テレビが光デジタルに対応していない場合はそちらを利用します。
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出所:筆者撮影
ミライスピーカーから流れる音は、テレビ単体のスピーカーで流している音よりも、バランスがしっかりとれている印象を受けました。あくまで個人の意見になりますが、音声が耳にダイレクトで飛び込んでくるような少し不思議な感覚です。ホームシアターのような製品とは目的が異なるので、包み込まれるような音響になるわけではありませんが、独特の心地よさを感じました。
聞き取りやすさについては、健聴者が聞いてもストレートに「聞き取りやすくなった」とはならないかと思います。すでに聞こえている音に対して「聞こえている」という実感を得るのは難しいためです。「実際に聞こえが低下している人の方が効果が得やすい」ということは認識しておいた方がよいでしょう。
さまざまなモードを備えている昨今のサウンドバーなどと違って、ミライスピーカーは使いやすさを重視し、多彩なモードは搭載しておらず、音量調整のみできる設計になっています。本体インターフェースも正面に音量調整用のダイヤルを備えるのみ。リモコンのボタンも電源と音量調整(+/-)の3つのみです。
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出所:筆者撮影
もしかすると健聴者の方は物足りなさを感じるかもしれませんが、シンプルさを追求することで「聞き取りやすい音を届ける」という尖った目的を実現しているのがミライスピーカーの価値です。万人に刺さる価値ではありませんが、聞こえに悩む人にとっては非常に喜ばれるのではないでしょうか。
個人的にはテレビの音を変えることなく、誰もが快適な音環境を作ることができるという点にも魅力を感じました。これは一般的なスピーカーではなかなか実現できないことでしょう。聞こえに悩む両親と離れて暮らしている人にはもちろん、一緒に暮らしている人にとってもメリットは大きそうです。
参考資料
大蔵 大輔