3. 貯蓄が3000万円あれば老後は安泰?

貯蓄が3000万円あれば老後は悠々自適に過ごせるのかを考えてみましょう。

3.1 【借入金の有無】

先にも触れましたが、貯蓄だけを考えるのではなく、借入金の有無や金額も考慮する必要があります。仮に3000万円の貯蓄があっても1000万円の借入金があれば純粋な貯蓄額は2000万円になるためです。

3.2 【不動産の有無】

また、不動産を持っていれば貯蓄が3000万円に満たなくても、特に問題がないケースもあります。

というのも、持ち家があれば固定資産税などの支払いは発生しますが、毎月の家賃の支払いがなくなるためです。さらに、空いている土地を貸している場合は不動産収入を得ることも可能でしょう。

3.3 【介護施設への入居の必要性】

介護付き老人ホームに入る場合には入居一時金を支払うのが一般的です。入居一時金は100万円程度の施設が多いですが、中には2000万円以上かかる施設もあり、3000万円の貯蓄があっても余裕がないことが考えられます。

このように、単に貯蓄額が3000万円以上あったとしても、それだけでうらやましいとは言い切れないことがわかります。

負債の有無や不動産の有無、介護施設への入居の必要性などさまざまな面から考慮する必要があります。

4. まとめにかえて

60歳代で貯蓄3000万円以上あるのは二人以上世帯では20.3%、単身世帯では16.9%となっています。

いずれも平均額や中央値と比較して高額となっており、貯蓄額だけを見ると「うらやましい」と感じるかもしれません。

しかし、借入金があったり介護施設への入居が必要になったりするケースもあり、3000万円の貯蓄があっても十分とはいえないこともあります。

一方で、貯蓄額が少なくても不動産を持っていれば毎月の支出が抑えられたり不動産収入が得られたりすることもあります。

このように、実際には世帯により事情が異なるため、3000万円の貯蓄があれば必ずしも老後生活は安泰とは言い切れないのが実際のところでしょう。

とはいえ、いざというときに取り崩せる貯蓄は多い方が安心なので、できるだけ早期に老後資金の準備を始めておくことをおすすめします。

参考資料

木内 菜穂子