糖尿病の総患者数は約317万人、強く疑われる人も約1,000万人

生活習慣病の1つである糖尿病についてご存じですか? 恐らく、その名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。

厚労省の調査結果によれば、「糖尿病が強く疑われる者」(糖尿病有病者)、「糖尿病の可能性を否定できない者」(糖尿病予備群)は各々約1,000万人とのことです(平成28年)。そして、糖尿病の総患者数は316万6千人(平成26年:男性56%、女性44%)となっており、前回調査(平成23年)より約50万人増加しました。

注:本稿では生活習慣によるものとは異なる「1型糖尿病」については触れていません。

糖尿病と診断されたAさん、終わりのない治療が始まった

Aさん(50歳代前半)はこの度、医師から糖尿病と診断されました。“糖尿病の恐れが強い”ではなく、完全な糖尿病の患者となったようで、Aさんは落ち込んでいました。

Aさんは従前から血糖値が高かったようですが、今回の受けた検査で“危険領域”を超えたということです。「糖尿病連携手帳」も作成され、さっそく投薬(飲み薬)も行いました。基本的に生涯終わることのない治療が始まったのです。

糖尿病とはどのような病気なのか?

糖尿病は、主にインスリンの作用不足によって、慢性的な高血糖状態になる代謝疾患です。

本当にザックリですが、説明しましょう。人が炭水化物などから摂取した糖質は消化されてブドウ糖となり、血液中から全身の細胞に取り込まれて主なエネルギー源となります。血液中のブドウ糖を血糖と言います。このブドウ糖はインスリンというホルモンによってコントロールされ、血糖値は適正に保たれようとします。

しかし、インスリン作用が不足すると、血糖値の高い状態が続くことになります。この状態が糖尿病です。

糖尿病が進むと発症する「3大合併症」とは?

高血糖状態を長期間放置すると、「合併症」という形で全身に深刻な影響が表れてきます。

この合併症は、まず身体中の細い血管(細小血管)から発症することが知られています。その主な合併症(=細小血管症)として、1)糖尿病網膜症、2)糖尿病腎症、3)糖尿病神経障害の3つが挙げられ、「糖尿病の3大合併症」と呼ばれます。

1)の網膜症は視力が低下して、症状が進むと失明に至ります。2)の腎症は腎臓の機能が低下して腎不全や尿毒症を発するため、最後は人工透析が必要になります。ちなみに、人工透析導入の原因の第1位が糖尿病腎症です。3)の神経障害は、手足の痺れや痛みの他、足先の感覚が麻痺して潰瘍や壊疽になる場合が多々あります。

大血管症では生命の危機に直結するケースが多発

さらに、大きな血管の病気である動脈硬化により発する合併症が、脳卒中(脳梗塞や脳出血)、心筋梗塞、末梢動脈性疾患などです。

脳卒中や心筋梗塞は生命の危機に直結することは言うまでもなく、いわゆる「突然死」や「早死」の根本的原因とも言われます。また、末梢動脈性疾患は細小血管症の神経障害が深刻となったものであり、最後は足の切断に至るケースも少なくありません。

糖尿病の特徴は“自覚症状が希薄”ということ

このように、糖尿病は非常に恐ろしい病気です。また、基本的には完治することが望めません。

しかし、もっと恐ろしくて厄介なことは、自覚症状が希薄だということです。これは、糖尿病の大きな特徴の1つでもあります。逆に言うと、前述したような合併症を発した、あるいは強い自覚症状を覚えた時は、既に“手遅れ”とも言えるのです。

冒頭で紹介したAさんも、自覚症状は全くなく、ごく普通に日常生活を送っています。今回、糖尿病と診断されて治療を始めると言われた時も“そんな大袈裟な、何もそこまで”と思ったそうです。

しかし、医師から「合併症を引き起こしたくないならば、これが最後のチャンスになる」と諭されて、治療を行う決心をしたそうです。診断当日から血糖値を下げる薬を飲み始め、近々、眼底にある毛細血管の精密検査と腎臓の超音波検査も受けなくてはならないとのことでした。

Aさんが始めた糖尿病治療、極端な食事制限はなし

糖尿病は完治が望めません。したがって、Aさんはこれから生涯にわたって、合併症が発することを避けるために、薬を飲みながら食事運動療法を続けることが必要になります。

一方で、Aさんに極端な食事制限は課せられませんでした。それどころか、飲酒も嗜む程度なら問題ないとのことです。

実は糖尿病の場合、厳しい食事制限が行われることは極めて少なく、適正な必要カロリーを毎食バランス良く摂取することが、最も有効な食事療法のようです。

ただ、毎食バランスよく栄養素を摂取するということは、簡単そうに聞こえますが、非常に難しいことです。特に、それを長期間ではなく、無期限で続けなくてはなりません。

あなたも糖尿病かもしれない! 定期的に血液検査を受けよう

最後に、“自分が糖尿病かもしれない”、”糖尿病の疑いがあるのか不安だ”という人は、次の自覚症状をチェックしてみてください。

  • 多尿(尿の量が多くなる、頻尿も含む)
  • 口渇、多飲(のどが渇いて、たくさんの水分を欲する)
  • 体重減少(いつの間にか体重が減るようになった)
  • 疲れやすい

これらの自覚症状を強く覚える方は、既に深刻な状態である可能性があります。今すぐ、病院に行って下さい。ちなみに、Aさんにはこうした自覚症状がなかったそうです。

また、こうした自覚症状がない人も、定期的に(少なくとも年に1~2回)血液検査を受けることをお勧めします。特に、少しでも肥満傾向にある方は、頻繁に受けてもいいでしょう。

糖尿病の本当の恐ろしさは、手遅れになった時に初めてわかるのかもしれません。

LIMO編集部