すべての中学2年生が毎夏、公費で海外研修する飛島村

すべての中学生2年生が毎夏、米国カリフォルニア州で5泊7日の海外研修を行っている地域があります。なんと旅費・宿泊費はすべて、公費負担。夢のような教育が行われているのは、愛知県飛島村です。制度が開始して27年目の昨年夏は、40人が飛び立ちました。

飛島村では、出生から1年を経たときに10万円、小・中学校に入学時に各10万円。40歳以下で結婚すると5万円。在住20年以上で90歳になると20万円、95歳で50万円、100歳で100万円が支給されています(飛島村「安全・安心・安定のむらづくり」)。

飛島村は人口5000人ほどの自治体ですが、小さいがゆえに収入が濃縮された形で財政を潤しています。収入額を支出額で割った財政力指数は2.11で、全国トップ。都道県別トップの東京都でも1.10なのと比べると、豊かさがよくわかるのではないでしょうか(総務省「平成27年度地方公共団体の主要財政指標一覧」)。

高齢化率が最も低いのは、東京から船で24時間の小笠原村

全人口に占める65歳以上の割合を表したのが、高齢化率です。最も高齢化率が低いのは沖縄県で、2位が東京都。その東京都内で最も低いのは、小笠原村です。全国の高齢化率27.3%に対し、小笠原村は14.9%になっています(内閣府「平成29年版高齢社会白書(概要版)」等)。

東京から24時間。現状、飛行機便はなく、船便さえ1週間に1便程度しかありません。不便な離島は過疎化が進み高齢者の割合も高くなるのが普通なのに、意外です。

理由としては、まず公務員として赴任する人が500人ほどいることです。小笠原村の人口は3000人ほどですから当然、若い世代の占める割合が高くなるのです。

観光施設で働くアルバイト、あるいは観光客として訪れた人が島の豊かな自然に魅入られて永住するケースなども若者比率を高めている理由になっているようです。ちなみに合計特殊出生率は全国平均を上回り、東京都の約2倍になっています。

悲しい歴史を乗り越えて、財政力と若さの現在がある

東京都の最低賃金率が適用されるメリットを求めて小笠原村での永住をめざす人もいますが、実際に永住して生活するのはそう容易ではなさそうです。もっとも公務員や建築など何らかの技術を持っていれば比較的、職を見つけやすいと言われています。

小笠原村は戦争中に強制疎開が行われ、島民は島外へ。戦後は米国統治下に置かれ、島民が再び島に住めるようになったのは1968年からです。悲しい歴史ではありますが、全員が移住者のようなところがあり、村社会にありがちな閉鎖的な面がないのが移住者には好評です。

飛島村は名古屋市に隣接しているため、企業の倉庫などが多く立地し、その固定資産税が財政を潤しています。嫉視も手伝い、「努力もしないでリッチになった」というような言い方をされることもあります。

しかし、ひと昔前までは貧しい農村で、町村合併を希望しても拒否されていたほどです。また1959年の伊勢湾台風では、特別な産業もない貧しい村だったことから、復旧作業を後回しにされ、2カ月間も水没状態という悲しい記憶を背負っています。

運も実力のうち!

両村ともに、苦難の歴史を乗り越えて現在があります。運も実力のうちと言われます。もしかすると、運命の女神様がねぎらってくれているのかもしれません。

間宮 書子