昨年11月に開かれたCOP23(国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議)では、日本と世界の環境対策の意識の違いが浮き彫りになりました。各国が「脱炭素化」への取り組みを発表する中で、日本は石炭火力発電の設備を輸出することを発表してしまったのです。
では、どうして日本と世界でこのような差が生まれてしまったのでしょうか?
2015年が分水嶺になった
そもそも脱炭素化とは、温室効果ガスの排出量を低いレベルに抑える「低炭素化」とは違って、温室効果ガスの排出量をゼロ(またはマイナス)にすることを指します。2015年に採択された「パリ協定」がきっかけとなって、世界に広がりました。
パリ協定では、「今世紀後半に温室効果ガス排出量をゼロにすること」が目標として掲げられており、これを達成するために、世界各国がさまざまな取り組みを始めました。
加速度的に広まる動き
たとえば、イギリスとフランスは、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する政策を打ち出しました。ほかにも世界銀行が、石油や天然ガス開発に新たな融資をしない方針を表明するなど、多くの企業や金融機関が脱炭素化へ舵を切り始めています。さらに、化石燃料や原子力関連企業に投融資している銀行の口座を解約し、これらの事業に投融資していない銀行に乗り換える「ダイベストメント(投資撤退))という運動まで起こっています。
この背景には、このまま温暖化が進むと、異常気候や海面上昇などで事業拠点が被害を受けることなどが予想されるため、炭素の排出が「経営リスク」として受け止められるようになったことがあります。また、脱炭素化を掲げる企業は、生産から流通までのすべての過程で炭素を排出しないことを目標としているため、脱炭素化を行っていない企業とは取引をすることができません。そのため、脱炭素化の動きが加速度的に広まっているのです。
日本ではどうか?
残念なことに日本では、脱炭素化の動きはそこまで進んでいません。欧米のように、2000年代には電力の小売事業が自由化されていて、各企業がどのエネルギーを利用するかを選べるようになった地域とは違い、日本で電力の小売事業が自由化されたのは2016年のことです。また、福島の原発事故をきっかけにコストの安い火力発電の割合が高まったことや、自然エネルギーを送電する送電網が不十分なことも、脱炭素化が進まない理由です。
ただ、日本企業の中でも、リコーや積水ハウス、アスクルといった企業は、「RE100」という、事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟するイニシアチブに参加することを表明しています。
日本の脱炭素化はいつ?
国内では、今後は2020年に発電と送電を行う事業者を分ける「発送電分離」が予定されており、自然エネルギーの送電網の整備も進むといわれています。ただ、脱炭素化を進めていくには、それぞれの企業が環境問題に対して関心や危機感を持ち、世界の潮流に取り残されないようにしていくことが必要でしょう。
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