4. 両社の主な事業上のリスクとは

日本製鉄や神戸製鋼の「事業等のリスク」において、同社のリスク要因が多数記載されています。これらを踏まえて、特に次のようなリスク要因には留意したいところです。

  • 市況変動リスク
  • 需給変動
  • 気候変動問題への対応

市況変動はとくに短期的に株価に織り込まれやすい要素です。鉄鋼価格や自動車の販売台数など鉄鋼価格などの市況変動が、両社の売上・利益に影響を与えます。

また、両社ともグローバルに事業展開していることから、為替変動も重要です。

基本的に円安が業績下支え要因、円高が悪化要因となります。為替は鉄鋼価格と比べて日々容易にチェックできることもあり、株価が連動しやすいとも考えられます。

市況に付随して、鉄鋼の需給変動も重要な要因です。

先進国や中国の経済動向や設備投資の動向、世界情勢などがしばしば鉄鋼需給の変動要因となります。

足元は日本製鉄によると需要面では厳しい需給環境が続いているとの見方もあり、需要の低迷が業績に響けば、株価の下落要因となるリスクもあります。

鉄鋼は生産過程で大量の二酸化炭素を排出するため、気候変動へのインパクトが課題となりやすいでしょう。

気候変動を抑えるための追加コストを支払ったり、諸外国の規制に対応したりすることにより収支が悪化すれば、株価の下落要因となる可能性があります。

5. 日本製鉄の株主優待・配当金

日本製鉄の配当金は2022年度に過去最高の年間180円となりましたが、2023年度は150円へ減配となる予定です。

ただし2023年度当初は140円を見込んでいたため、2023年度第1四半期の好業績を背景に当初予想より減配幅は縮小する見通しです。

また、工場見学会・経営概況説明会や鹿島アントラーズのサッカーの試合観戦チケット、東京の紀尾井ホールでの演奏会など、イベントを主体とした株主優待を提供しています。

6. 神戸製鋼の株主優待・配当金

神戸製鋼は、2023年度第1四半期決算とともに配当予想の修正を行っており、2023年度は年間90円へ増配予定です。

業績の向上に加えて、配当性向を従来の15%~25%から30%まで引き上げる方針としたことがその背景にあります。

また、同社では株主優待は実施しておらず、配当や株価成長での株主還元を重視するスタンスと思われます。

※本記事は執筆時点の公開データをもとに執筆されたものです。

参考資料

宮野 茉莉子