2. 鉄鋼市況に対する懸念も重しか

日本製鉄の決算資料では、鉄鋼市況の悪化が繰り返し懸念材料として説明されています。

2022年度決算においては経営努力などで好業績を実現したものの、2023年度にかけては在庫評価損が経営上の重しになるとの見方も示されていました。

市況が懸念材料となったことも、株価の調整要因の一つとなったと考えられます。

日本製鉄については、2023年業績見通しにおいて1500億円の在庫評価損を出して、同年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は3700億円となる見通しを示しすなど、慎重な見通しを示したことが株価の重しの一つになったと思われます。

3. 2023年6月以降は堅調な推移に

6月以降はまず円安の進行により両社の業績が下支えされるとの期待から、株価の回復が進んだと思われます

5月末以降のドル円為替相場の推移(円/ドル)2023年5月30日~2023年9月26日

出所:各種資料をもとに筆者作成

さらに8月に公表された2023年度第1四半期決算において、逆風要因がありながらも、神戸製鋼は神戸発電所の稼働や出荷価格・原料コストのスプレッド(メタルスプレッド)改善などにより増収増益となっています。

日本製鉄も、引き続き厳しい事業環境であることを示しつつも、鋼材需要の回復やメタルスプレッドの改善を主因に好業績を発表しています。

厳しい事業環境の中でも好業績を発表したことが投資家に対して安心感を醸成し、両社の株価は一段と上昇したと考えられます。