正月後の弱った胃を休める七草がゆ

新年おめでとうございます。

三が日も過ぎ、1月4日が仕事始めという方も多かったかと思います。今年はすぐに成人の日の3連休になるため、本格的に稼働するのは週明けの9日からという方も多いかもしれません。

年末年始の過ごし方はいろいろですが、普段なかなか会えない家族が集まることも多いでしょう。自然と、いつもより食べたり飲んだりする量も多くなりがちです。

そうした事情は今も昔も同じのようで、昔から、元旦を含め年明けの7日後に、お正月に弱った胃腸を休めるために、七草がゆをいただく風習があります。

七草がゆに関する諸説のもとと言われる「七草草紙」

七草がゆをいただく風習の由来は諸説あり、平安時代の頃までさかのぼるという説もあります。そのもととなっているのが、「御伽草紙」の中の「七草草紙」と言われます。話の内容は、ざっと以下の通りです。

唐の国にある親孝行者がいて、100歳を越えた両親の体の弱った様子を嘆き悲しんでいました。ある時、老いた両親を若返らせたいと、「私に老いを移し替えてもかまわないので、両親を若返らせてください」と願かけをしました。

天上の帝釈天がその願いを聞きとげ、須弥山の南にいる8,000歳という白がちょうの長寿の秘訣を伝えました。

教えられた通り、1月6日までに7種の草を集め、決められた時刻に柳の木の器に載せて玉椿の枝で打ち、東から汲んできた清水で煮て両親に食べさせたところ、1口食べると10歳、7口で70歳若返りました。この話はまたたく間に世間に伝わり、人々の習慣となりました。

地域の多様性も楽しめる七草がゆ

現在、関東地方を中心に言われている春の七草というのは、せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな(かぶ)、すずしろ(大根)の7種です。

「七草草紙」に登場するものとは少し異なっていますが、これらを1月6日の夜にまな板の上に乗せ、しゃもじや包丁の背で叩いて細かくし、翌1月7日に塩味のおかゆにして朝食に食べるものが七草がゆとされています。

地域によっては、七草がゆに入れる具材の種類は異なります。なずなさえ入っていれば良いとしているところ、あり合わせの青菜を入れるところ、正月のお雑煮と同じ具を入れるところなど様々です。また、おかゆと思いきや、お餅まで入れる地域もあるそうです。

地域によっておせち料理や雑煮に多くの工夫がされているように、七草がゆもまた、日本の各地域それぞれの多様な文化と融合してきたと言えます。

七草がゆをいただきなながら幸せな人生に必要なことを考える

上で紹介した「七草草紙」の話が伝えようとしていることには、以下の3つも含まれているように思います。

  • (7種類くらいの)複数の食材をバランスよく摂ることが健康の秘訣であること
  • 健康な体だけでなく、親孝行といったような心の持ち方も大事だということ
  • 人生に必要なもの(両親の若返り)を得るためには、必要な手間ひまをかける(七草を集めて刻む)必要があるということ

七草がゆには、おせち料理やお雑煮のような派手さはありません。それでも長く人々の風習として続いてきたことには、やはり意味があるのでしょう。

七草を刻むのにいくらかの手間をかけ、七草がゆをいただきながら、お金に限らず、幸せな人生に必要なものを得るのに何をすればよいかを考えてみるのも良いかと思います。

2018年が健やかで穏やかな年になりますように。本年もよろしくお願いいたします。

藤野 敬太