算数は、計算力だけではなく、思考力を問う学びへと変化している
2020年度、小学校で学習指導要領が改定されてから低学年の算数でも文章題に取り組む機会が増えています。
かけ算では九九を覚えればいいだけでなく、「かける数」と「かけられる数」の関係性を先生が説明し、子ども達も自分の考えを披露するアクティブラーニングが行われています。
わり算では「割られる数」と「割る数」について考えさせる授業が行われており、昭和の頃のようにたくさん計算問題を解いて計算スピードが速い子がクラスの注目を集めるという時代ではありません。
もちろん、親世代の頃から学年が上がるにつれて論理的思考力がなければ理解できない単元、問題が増えていきました。この点は昔も今も変わらず、小学校高学年、中学校以降の数学は計算オンリーの世界ではなくなり理論的に物事を考えて解く学びへと変わっていきます。
しかし、今は計算力で算数が得意な子と認定されていた時代とは少しずつ変わってきているのです。
ただし、蔵書数が少なくても、相手への伝え方を工夫することで正答率は上がる
冒頭でもお話した通り、算数や数学も本に親しんでいる子が有利なのは、全国学力テストの結果と調査からも明らかであり、「家にある本の冊数」が少ない(家庭の社会経済的背景(SES)が低い)ほど各教科の平均正答率が低い傾向がみられます。
ただし、いきなり子どもを本好きにさせることもできません。まして、一気に100冊の本を購入して家に置いておくのも無理があります。
しかし「令和5年度全国学力・学習状況調査の結果」をみると、家庭の蔵書数が少なくても、授業中の発言で工夫する意欲のある子は、どの教科においても正答率が高いことが分かりました。
「蔵書数0冊から25冊」のグループ内における全国学力テストの結果正答率
「蔵書数0冊から25冊」という、家庭の蔵書が少ないグループ内でも、授業で自分の考えを発表する機会に、自分の考えがうまく伝わるよう、資料や文章、話の組立てなどを工夫して発表しているほど、正答率が高くなる傾向がみられます。
「授業で、自分の考えを発表する機会では、自分の考えがうまく伝わるよう、資料や文章、話の組立てなどを工夫して発表していたか」という問いに対する回答と、各教科の平均正答率の関係は、下記のようになりました。
小学6年国語
- 発表していた:平均正答率64.4%
- どちらかといえば、発表していた:平均正答率60.0%
- どちらかといえば、発表していなかった:平均正答率54.2%
- 発表していなかった:平均正答率50.5%
小学6年算数
- 発表していた:平均正答率61.3%
- どちらかといえば、発表していた:平均正答率57.5%
- どちらかといえば、発表していなかった:平均正答率52.0%
- 発表していなかった:平均正答率48.0%
小学6年理科
- 発表していた:平均正答率61.6%
- どちらかといえば、発表していた:平均正答率58.3%
- どちらかといえば、発表していなかった:平均正答率52.6%
- 発表していなかった:平均正答率48.6%
中学3年国語
- 発表していた:平均正答率69.8%
- どちらかといえば、発表していた:平均正答率67.2%
- どちらかといえば、発表していなかった:平均正答率60.4%
- 発表していなかった:平均正答率55.3%
中学3年数学
- 発表していた:平均正答率53.1%
- どちらかといえば、発表していた:平均正答率48.7%
- どちらかといえば、発表していなかった:平均正答率40.3%
- 発表していなかった:平均正答率34.5%
中学3年理科
- 発表していた:平均正答率49.5%
- どちらかといえば、発表していた:平均正答率46.7%
- どちらかといえば、発表していなかった:平均正答率40.8%
- 発表していなかった:平均正答率37.1%
蔵書数は、親の経済力や関心の有無で左右されることもあります。
しかし、蔵書数にかかわらず、自分の考えがうまく伝わるよう、資料や文章、話の組立てなどを工夫して発表することはできますし、テストの正答率アップにもつながります。
この結果を踏まえて、今後の公教育の現場ではますますアクティブラーニングが増えると考えられます。