寿命の伸びと同時にセカンドライフも長くなっている今、60歳以上のいわゆる「定年世代」の方々は、色々な不安を抱えています。ここでは、定年世代の方々の多くが持っている「3つの不安」にフォーカスし、その不安が実際のところ、どうなのかを探っていきます。

定年世代の3つの不安

 定年世代の「不安」や「悩み」は、大きく次の3つに分けられます。

  1. 健康
  2. 人間関係
  3. お金

 ご存じの方もおられると思いますが、「健康寿命」という考え方があります。これは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。平均寿命との差は、現在、男性で9.13年、女性では12.68年で、言い換えるとこの期間は「健康ではない期間」ということです。

 さらにこの「健康ではない期間」は、当然ながら何らかの介護が必要となり、介護費用が生活費とは別に発生します。介護つきマンションや老人ホームに入ることを想定している方がおられますが、そのときにかかる数千万円の入居金や、十数万から数十万円という月額費用の心配をされる方も多くいます。

孤独や寂しさを感じる人も多い

 そして人間関係については、「近親者」と「それ以外の人たち」の2通りがあります。

 たとえば、定年後に夫婦関係がギクシャクしてしまうという話は耳にしたことのある方も多いでしょう。男性がほとんどですが、夫婦の片方だけが働いているという家庭の場合、これまで少なかった「二人とも家にいる時間」が増えることで、お互いにイライラしてしまうということが多いようです。定年した途端に離婚されてしまうとか、子どもも独立して関係が疎遠になってしまうなどのことがあって、孤独な老後を過ごす方も増えてきています。

 また、家族以外の人間関係は、仕事と疎遠になることからぐっと減ってしまいます。仕事をしていたときの人脈が定年後は続かずに、急に寂しさを感じたりする人も多くいるのです。

収入面でも支出面でも悩みがいっぱい

 そして3つ目の「お金」。悩みはさまざまですが、定年世代の特徴としては、次の2つの面でのことが挙げられるでしょう。

(1) 支出面の心配

  • 老後の生活資金が足りるか心配
  • 入院・介護に費用がかかる
  • 行動したいが、何かとお金がかかる

(2) 収入面の心配

  • 公的年金だけでは不十分
  • もう労働による収入はない
  • 資産運用がうまくできるかどうか心配

 現役時代には、働いて得られる収入によって、支出の心配は解消されていました。しかし、それは「自分が働けること」が大前提。定年世代にはそれができません。ここが現役世代との大きな違いです。

 定年世代には、「いまある原資を取り崩す」か「資産運用をする」の2つしか選択肢はありません。あり余るほど原資がある人は、そのまま取り崩していけばいいのでしょうが、普通の人はそうはいきません。「長生きしてしまうリスク」というものもあるのです。

 そうなると、「子どもに迷惑をかけてしまうのでは……」などと心配が増えます。自分の先行きが読めないことで、本来なら楽しめるはずの老後が楽しめず、本来ならお金を使ってもよいはずなのに、怖くて使えないという心理になってしまいます。

お金の心配は、たとえ普通の人でも杞憂に終わる

 ただ、その心配は、たいていの場合、杞憂に終わるようです。

 旭化成ホームズが実施した「親と子の財産相続に関する意識調査」(2013年)によると、預金・貯金、株式、債券、投資信託、生命保険などの金融資産の相続財産は、平均で約1700万円とのこと。つまり、金融資産に限っても平均で1700万円が「結果的に使われずに残っていた」ということです。このように、多くの方が多額の資産を使い切らないまま子どもに遺してしまうことが、「お金の心配の多くは杞憂である」という一つの証拠ではないでしょうか。

 寿命が伸びている中で、本来ならお金を使うことでもっと有意義に過ごせたであろう時を「不安な気持ち」から失ってしまうことは、少しもったいないとは思いませんか?

まとめにかえて

 こうした点を考えると、充実したセカンドライフを送るには、ひたすら倹約を続けるのではなく、たまの楽しみにお金を使ってみるのも一つの選択肢でしょう。今では「アクティブシニア」といった言葉も出てきていますし、ちょっとした小旅行でも、身近なショッピングや映画でも、「定年世代」に向けたサービスは充実してきています。せっかくのセカンドライフは楽しまなければ損でしょう。

 老後の悩みでも、特にお金に関しては、生活に直結しているものだからこそ不安を覚えやすいもの。しかし、多くの人がお金を遺していってしまうことや、お金を増やすための方法も増え、手軽なものも出てきていることも事実です。

 みなさんも、ご自身の漠然とした不安について、なんとなく捉えるのではなく、「実際のところはどうなんだろう?」と前向きに、具体的に検証してみるのはいかがでしょう?

(白石定之『投資信託でうまくいく人、いかない人』をもとに編集)

投資信託でうまくいく人、いかない人 「定年世代」が上質なセカンドライフをつくる方法

白石 定之