12月13日は「美容室の日」
12月13日は「美容室の日」です。ご存知でしたか? これは、有名美容師の正宗卓氏(現在は西洋髪結社社長)が2003年に制定したものです。毎年12月は美容室(「美容院」も含む、以下同)の来客が多くなることと、「13」がBeautyの「B」に似ていることが理由とされています。
何となくこじつけの感もありますが、美容室業界としてはこの「美容室の日」に社会貢献を果たすという意義もあるようで、盲導犬育成のための募金を呼び掛けたりしています。
さて、せっかくですから、現在の美容室・美容師業界の現状を見てみましょう。結論から言うと、美容室業界は日本では数少ない長期安定成長産業であり、ある種のバブルと言えなくもない状況にあります。その一方で、競争も激しく、新陳代謝の盛んな業界と見ることもできます。
増加が続く国内の美容室の数、19年間で+22%増
まず、国内にある「美容室」の事業所数は、年度末調査に変わった平成9年度末の198,889カ所から平成28年度末には243,360カ所へと+44,471カ所増加しています(厚生労働省「衛生行政報告例」より)。19年間の増加率は+22.4%増でした。
これは同じ期間に「理容室」が142,809ヶ所から122,539カ所へと▲20,270カ所減少(同▲14.2%減)したのと対照的です。都市部では、“確かに、家の周辺に美容室がたくさんあるなぁ”と感じる人がいるかもしれません。
直近まで実質的に17年連続の増加
また、美容室の数は平成12年度から現在まで実質的に17年連続の増加となっています。“実質的に”としたのは、微減となった平成22年度は東日本大震災の影響で調査対象外があったためです。
それにしても、大不況だったリーマンショック時でも増加したことは特筆すべきことです。 “美しくなりたい”、“美しく見せたい”という思いは、景気変動も関係ないのでしょうか。
「美容室」と「理容室」は業務内容が異なる
ところで、美容室と理容室は同じような名称ですが、業務内容は明確に区分けされています。詳細は省略しますが、美容室の業務は「化粧、結髪、パーマなどにより容姿を美しくすること」となっており、頭髪の刈込やカットが中心の理容室とは異なります。
その結果として、男性が行くのが理容室(床屋)、女性が行くのが美容室となっているようです。最近は若い男性が美容室に行くことも珍しくありませんが、基本的には女性客が圧倒的に多いと見ていいでしょう。
美容室で従事する「美容師」は19年間で+53%増
このように美容室の数を見ると、この業界は急成長産業ではありませんが、長期的に安定成長が続いていると見ることができます。次に、従業員を見てみましょう。
同じ厚労省の統計によれば、美容室数の増加に伴い、そこで働く「美容師数」も平成9年度末の333,153人から平成28年度末には509,279人へと増加の一途を辿っています。19年間での増加率は+52.9%増ですから、美容室数の増加率を大きく上回るペースです。
その年によってバラツキはあるものの、ここ10年間は毎年平均+8,000~+9,000人増加しています。ただ、平成28年度は約+4,600人増に止まりました。ちなみに、理容室で働く「理容師数」は同じ期間で▲11.4%減となっており、ほぼ理容室数の減少に沿ったものと言えましょう。
美容師の新規登録者数と増加従事者数の需給ギャップ
この数字だけを見ると、何となく人手不足という印象がなくもありません。しかし、「美容師」は国家試験に合格して名簿登録しなければ従事できません。この名簿登録される美容師は、直近10年間は毎年約18,000人です(平成28年度はデータなし)。
つまり、毎年新たに約18,000人の新たな美容師が誕生しているにもかかわらず、統計上で増加している美容師数は8,000~9,000人に止まっているのです。
登録した全員がすぐ従事するわけではないとはいえ、明らかに大きな“需給ギャップ”が存在していることがわかります。単純に考えれば、毎年多くの美容師が“失職”しているということになります。
美容師は激しい競争にさらされる人気稼業
そういえば、随分前にテレビで有名美容師が独立して自分の店を持つドキュメント番組を観たことがあります。
近所の床屋にふらっと行く筆者にはなじみがありませんが、美容室ではお客さんがお気に入りの美容師を“指名”することが普通で、その指名が減っていく美容師は仕事も給料も下がっていくというような内容でした。
どうやら、美容師は代表的な人気稼業の1つであり、激しい競争にさらされ、新陳代謝の盛んな職種のようです。
“美しくなりたい”という願望が続く限り…
こうした美容師の新陳代謝を促しているのも、“美しくなりたい”という飽くなき願望なのでしょうか。店舗数も従事美容師数も拡大する美容室業界は、美しさを求める思いがある限り競争を続けながらも成長するのかもしれません。
LIMO編集部