おひとりさまの多くが将来的に頼れる人がいない状況に
自立して暮らせている時期はひとり気ままに暮らせるおひとりさまであることに満足している人も多いはずです。
しかし歳を重ねるごとに自分で食事の支度をしたり、入浴したり、買い物や病院に行ったりすることが少しずつ困難になることも少なくありません。
近年ではスーパーや家電量販店のオンラインストアが充実している他、オンライン診療も普及しつつありますが、それでも高齢者が一人で生活を維持するのは大変なことです。
また、日常的に人と接する機会が少ないと、体調の異変に気付けなかったり、行政の支援からもれてしまったりということもあります。
前述の調査によると、おひとりさまの約80%が「老後、家事や看護を手伝ってくれる人」は「特にいない」と回答しています。
同調査によると、特に男性の方が女性よりも老後に家事や看護を頼める人がいない傾向にあります。
また、最も多くのおひとりさまが将来的に家事や看護を「兄弟姉妹」に手伝ってもらいたいと考えているものの、全体でその割合は15%程度にとどまっています。
地域で高齢者をサポートするといった価値観は社会の表面上にはあるものの、現実は「地域・近隣の人」にサポートを期待している人はほとんどいません。
最近では自治会への入会を断る人は珍しくない他、地域住民と親しくしなくても社会生活を問題なく送れるため、この傾向はますます強くなるかもしれません。
おひとりさまの貯蓄額の平均はどのくらい?
家事や介護などは行政のサービスを利用する方法もありますが、比較的低価格ではあるといえ料金が発生します。
高齢者を対象としたサービスを気兼ねすることなく受けるには、毎月の生活費の基盤となる年金収入がある程度あることはもちろん、貯蓄の有無も重要なポイントです。
ここで、少し前の資料になりますが、総務省統計局「2019年全国家計構造調査 所得に関する結果及び家計資産・負債に関する結果 結果の概要」より、性別・年齢別のおひとりさま(単身世帯)の金融資産残高を確認します。
男女ともに50歳代になると貯蓄額の平均は1000万円を超えます。
また仕事を定年退職したり、これまでと働き方を変えたりする人が多い60歳代の貯蓄額は男性が約1700万円、女性が約1400万円となっています。
老後には2000万円必要と言われていますが、年金額や生活水準、健康状態などによっては1500万円前後の貯蓄でも問題ないこともあります。
しかし、平均よりも現実に近いと言われている中央値では、おひとりさま世帯の厳しい状況がうかがえます。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和4年調査結果」によると、60歳代の単身世帯の貯蓄額の平均は1388万円なものの、中央値が300万円(金融資産を保有していない世帯を含む)であることを見落としてはいけないでしょう。