マンションの「相続税評価額」と「時価(市場売買価格)」との乖離の実態とは?

マンションの相続税評価額と市場価格との乖離の実態は、国税庁が2023年(令和5年)6月30日付けで発表した資料により知ることができます。

2018年(平成30年)時点の乖離率(市場価格÷評価額)は2.34倍となっています(一戸建ての乖離率の平均は1.66倍)。

つまり時価1億円のマンションであれば、評価額は4273万円(1億円÷2.34)となり、現金で所有しているよりもはるかに税負担の少ない、節税商品のような役割を持っていることがわかります。

そして全体の約65%は、評価額が市場価格の半額以下になっているというのが実態のようです。

国税庁の資料には、具体的な実例も掲載されています。

都内にある築9年43階建てのタワーマンションでは、23階の67.17㎡の住戸の市場価格(時価)は1億1900万円。

ところが相続税評価額を算出するとわずか3720万円で、市場価格は相続税評価額の3.2倍(乖離率)にもなっています。

そして相続人が子供1名だとすると、基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)の3600万円を引くと、課税価格は120万円。

したがってマンションだけが相続財産の場合には、税金はわずか12万円(課税価格1000万円以下の場合は税率10%)に過ぎません。

このような相続税の評価額と実勢価格との乖離が、富裕層を中心としたタワーマンションの需要につながっているといえます。

マンションの相続税評価の方法と乖離の要因

国は個人が所有している資産を一定の基準を用いて評価し、その額に応じて相続税を算出しています。

現金や株式は時価のまま評価されますが、土地やマンションなどの不動産は時価よりも低い額で評価されています。

マンションの評価額が市場価格(時価)と乖離する要因としては、マンションの総階数や一室の所在階、築年数などが加味されていない上に、タワーマンションのように立地条件が良好で地価が高い場所であっても、多くの住戸で所有するために土地の持ち分が少なくなる度合いが大きいことが挙げられます。

すなわちマンションの場合には戸数が多いほど一戸あたりの評価額が下がり、特に階数が多いタワーマンションは土地の評価額の減少が顕著になります。

そして高層階にある物件は前述したように時価の2~3割程度で評価されることもあるので、実際の市場価格と比べて著しい乖離が生じることになります。

マンションと戸建てとの税金格差を是正するために

今回予定されている改正では一戸建住宅とのバランスも考慮して、相続税評価額が市場価格の60%未満になっているもの(乖離率が1.67倍を超えるもの)について、市場価格の60%(乖離率1.67倍)になるように評価額を補正します。

現行の相続税評価額×当該マンション一室の評価乖離率×0.6

つまり「相続税評価額×乖離率」でいったん市場価格に調整しなおしてから0.6掛けします。

これによってマンションの市場価格との乖離率を一戸建住宅並みにすることで、一戸建住宅の場合との税負担の公平を図るというものです。

そして評価水準が60~100%のものは補正を行わず、100%超のものについては100%になるように評価額を減額します。

この改正が適用されるのは2024年1月1日以降で、相続や贈与によって取得する財産が対象となります。

そしてタワマンだけが対象になる訳ではなく、全てのマンションが該当します。