証券口座を提供する金融機関は、差別化を目的に各々独自のサービスを展開しています。
そのため、複数の証券口座を利用することで、それぞれの特長や強みを活かした取引・情報収集が可能となるのです。
本記事では証券口座を複数もつメリット・デメリットを解説するとともに、メイン口座やサブ口座におすすめの証券会社も紹介していきます。
1. 証券口座は複数もてるのか?
まず、そもそも証券口座を複数もつことはできるのでしょうか?
結論から言えば「できます」。
むしろ積極的に口座を複数もつべきとすらいえます。
金融機関の証券口座はどこも同じではありません。
金融機関各社は自社の証券口座に付加価値をつけることで他社との差別化を図っているのです。
そのため、証券口座を複数開設することで、各金融機関の特長や強みを活かした取引や情報収集が可能となります。
なお、証券口座を複数開設することで維持費などの手数料が余計にかかるのではないかと心配している方もいるかもしれませんが、楽天証券をはじめ、さまざまな金融機関が口座開設費用や維持費を無料としています。
※ただし、各種費用は口座開設前に必ず公式サイト等で確認しておきましょう
2. 証券口座を複数もつメリット
ここからは証券口座を複数もつメリットをより具体的に見ていきましょう。
- 購入できる商品の幅が広がる
- IPOの当選確率が上がる
- システム障害時の機会損失を回避できる
- 証券会社独自のサービスやツールが利用できる
2.1 購入できる商品の幅が広がる
証券口座を複数もつことで購入できる商品の幅が広がります。
金融商品のラインナップは金融機関によって異なるためです。
たとえば、外国株式は米国のみしか取り扱っていない証券会社があります。
一方、SBI証券では米国・中国・韓国・ベトナム・シンガポール・インドネシアなど幅広く外国株式を取り扱っています。
また、投資信託のラインナップについても同様です。
たとえば、ゆうちょ銀行のように119本しか取り扱いのない金融機関もあれば、楽天証券のように2602本をラインナップしている証券会社もあります(2023年9月27日確認時点)。
複数の証券口座をもつことで運用商品の選択肢を常に広く持っておくと良いでしょう。
2.2 IPOの当選確率が上がる
IPOとは未上場会社の株を株式市場で取引できるようにすることで、以下のような流れで実施されます。
- IPOにあたり(企業より委託された複数の)証券会社は株式の公募価格を決定
- 一般投資家は抽選で公募価格により株式を購入
- 一般投資家は、公募価格により取得した株が上場される(株式市場で取引できるようになる)と同時に売却
上記のプロセスを経て、上場時に株式についた値段(初値)が公募価格よりも高ければ利益を得られるしくみです。
IPO株を公募価格で買うには以下の条件を満たす必要があります。
- (IPO株を買いたい会社の)幹事証券である
- 幹事会社で申し込みをして当選する
通常、IPOはリーダー的な役目を果たす主幹事証券にくわえ、複数の引受幹事証券などからも販売されます。
そのため、(幹事会社である)証券口座を複数もっていれば、IPOもその分申し込みができるため、当選確率を上げることができます。
IPO投資に興味がある方は証券口座を複数もっておくとよいでしょう。
2.3 システム障害時の機会損失を回避できる
証券口座は時折システム障害によって取引ができなくなるケースがあります。
複数の証券口座をもっておけば、このような不測の事態においても、別口座での買付が可能です。
2.4 証券会社独自のサービスやツールが利用できる
証券会社が提供する独自のツールやサービスを利用できる点も、証券口座を複数もつメリットです。
たとえば、松井証券は投資信託保有額の最大1%が還元される「最大1%貯まる投信残高ポイントサービス」を11月1日よりスタートします。
また、マネックス証券の日本株銘柄分析ツールである「マネックス銘柄スカウター」は口コミで高い評価を得ており、株式投資を行うなら注目必須です。
このように使えるツールやサービスも証券会社によってさまざまです。
証券口座を複数もつことで、より多くのサービスやツールを利用できるようになります。
3. 証券口座を複数もつデメリットは?
証券口座を複数もつことにはデメリットもあります。
主なものを確認していきましょう。
- 管理が面倒になる
- 確定申告が必要になる場合がある
- NISA口座は1つしか持てない
3.1 管理が面倒になる
証券口座を複数もつことで各種管理が面倒になります。
IDやパスワードを複数もつことになるほか、証券口座の残高や運用状況も口座ごとに管理しなければなりません。
3.2 確定申告が必要になる場合がある
証券会社で口座を開設する際には、以下の3種類から1つを選んで利用することになります。
- 普通口座
- 特定口座(源泉徴収あり)
- 特定口座(源泉徴収なし)
このうち、特定口座(源泉徴収あり)は証券会社が納税を代行してくれるタイプの口座であり、投資で利益が出た際にも確定申告は不要です(通常、投資の利益には約20%の税がかかります)。
ただし、証券口座を複数利用している場合は話が異なってきます。
たとえば、一方の口座で100万円の利益が出て、他方の口座で100万円の損失が出たとしましょう。
この場合、本来の税負担は0円です(利益が0円のため)。
しかし、証券会社は別々に口座を管理しているので、利益が出た方の口座には約20万円の税がかかってしまいます。
このような税の払いすぎについては確定申告(損益通算)を通じて還付申告をしなければなりません。
証券口座を複数利用する場合には、こうした手間が発生することもあります。
証券口座を2つもつなら1つはNISA用に
証券口座を2つもつ場合は1つをNISA用にするとよいでしょう。
NISAは対象の投資商品から得られる利益が一定期間非課税となる税制優遇制度です(年間の投資上限金額あり)。
NISAは通常の口座(証券総合口座)とは別に、NISA口座を開設することで利用できます。たとえば、楽天証券であれば、証券総合口座と同時にNISA口座を開設できます。
NISAには以下のルールが設けられています。
- NISA口座は(すべての金融機関を通じて)1つしかもてない
- NISA口座は損益通算の対象外
NISAは投資の利益にかかる税が免除となるとてもお得な制度です。
一方でNISA口座は最大でも一口座しかもつことができず、かつ損失がでても、他口座の利益との相殺はできません。
そのため、2つの証券会社を利用する場合、一方をNISA専用として利用すれば、そもそも損益通算の必要がなくなるのです。
確定申告の手間が嫌な人はこうした活用方法も検討してみましょう。
4. 複数口座をもつならおすすめしたい証券会社4選
ここでは複数口座をもつならおすすめしたい証券会社として、以下の4社を紹介します。
- 楽天証券
- SBI証券
- マネックス証券
- 松井証券
※紹介しているデータはいずれも2023年9月27日確認時点の情報にもとづきます。
4.1 楽天証券
楽天証券は手数料・商品ラインナップ・独自サービスのいずれにも優れたオールラウンダーなネット証券であり、総合口座数は900万を突破しています(2023年4月時点)。
国内株式の取引手数料は現物・信用とも無料(10月2日約定分~)、外国株も米国・中国・ASEAN(シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア)と幅広くカバーしています。
投資信託は2602本をラインナップ、つみたてNISA対象商品の取り扱いも195本と業界最多水準です。
さらに、投資信託の「つみたて購入」を楽天カード決済にすることで、最大1%の楽天ポイントが還元されます。
4.2 SBI証券
SBI証券はグループ1000万口座の開設実績を誇る人気ネット証券です。
オリコン顧客満足度(2023)ではネット証券部門で第1位に選ばれています。
国内株取引手数料は現物・信用とも無料(2023年9月30日~)、外国株も幅広くカバーしています。
<SBI証券で取り扱っている外国株(ロシアを除く)>
- 米国
- 中国
- 韓国
- ベトナム
- インドネシア
- シンガポール
- タイ
- マレーシア
投資信託は2636本を取り扱っており、つみたてNISAも208本をラインナップ。
IPOにも強く、2022年3月通期の引受社数は117社、関与率にして97.5%を誇ります。
社名 | 引受社数 | 関与率 |
SBI | 117 | 97.5% |
日興 | 76 | 63.3% |
みずほ | 75 | 62.5% |
楽天 | 70 | 58.3% |
野村 | 62 | 51.7% |
マネックス | 51 | 42.5% |
松井 | 50 | 41.7% |
岡三 | 47 | 39.2% |
※2022年3月通期
メイン口座としてはもちろんのこと、IPOや外国株投資用のサブ口座としても魅力の高い証券会社となっています。
4.3 マネックス証券
マネックス証券はサブ口座におすすめです。
主にIPO投資とツールを目的に利用するとよいでしょう。
というのもマネックス証券のIPO抽選は完全平等性で、過去の取引実績や申し込み回数、預かり資産の状況を考慮することがない分、投資初心者でもIPO投資に参加しやすいしくみを採用しています。
マネックス証券の新規公開株(IPO)/公募・売出株式(PO)の抽選においては、コンピューターで無作為に抽選を行っています。この過程はシステム化されており、人間の恣意が途中で関与することはありません。
出所:マネックス証券「抽選方法」
また、日本株銘柄分析ツール「マネックス銘柄スカウター」が人気の高いツールとして高い評価を得ているところも注目ポイントです。
4.4 松井証券
松井証券は投資信託用のサブ口座としておすすめです。
松井証券では投資信託保有額の最大1%が還元される「最大1%貯まる投信残高ポイントサービス」が11月1日よりスタートします。
NISA口座も対象となるので、NISAで投資信託を運用する専用口座としてもよいでしょう。
6. 参考資料
MeChoice編集部
・証券口座を複数もつことで各社の強みをいいとこ取りした取引や情報収集ができる
・メイン口座およびサブ口座としておすすめなのはSBI証券と楽天証券
・サブ口座としておすすめなのがマネックス証券と松井証券