2. 老齢年金「繰下げ受給」注意点8つ

日本年金機構によると、繰下げ受給の注意点は以下の通りです。

2.1 老齢年金「繰下げ受給」注意点①:加給年金や振替加算が対象の場合

加給年金額や振替加算額は増額の対象になりません。

また、繰下げ待機期間(年金を受け取っていない期間)中は、加給年金額や振替加算を受け取ることができません。

2.2 老齢年金「繰下げ受給」注意点②:75歳に達した月を過ぎて請求する場合

65歳に達した時点で老齢基礎年金を受け取る権利がある場合、75歳に達した月(75歳の誕生日の前日の属する月)を過ぎて請求を行っても増額率は増えません。

増額された年金は、75歳までさかのぼって決定され支払われます。

※昭和27年4月1日以前に生まれた方は、70歳に達した月までとなります。

2.3 老齢年金「繰下げ受給」注意点③:複数の老齢厚生年金を受け取る場合

日本年金機構と共済組合等から複数の老齢厚生年金(退職共済年金)を受け取ることができる場合は、すべての老齢厚生年金について同時に繰下げ受給の請求をしなくてはいけません。

2.4 老齢年金「繰下げ受給」注意点④:障害給付や遺族給付を受け取る権利がある場合

65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までの間に、障害給付や遺族給付を受け取る権利があるときは、繰下げ受給の申出ができません。

ただし、「障害基礎年金」または「旧国民年金法による障害年金」のみ受け取る権利のある方は、老齢厚生年金の繰下げ受給の申出ができます。

2.5 老齢年金「繰下げ受給」注意点⑤:他の公的年金の受給権が発生した場合

66歳に達した日以後の繰下げ待機期間中に、他の公的年金の受給権(配偶者が死亡して遺族年金が発生した場合など)を得た場合には、その時点で増額率が固定され、年金の請求の手続きを遅らせても増額率は増えません。

このとき、増額された年金は、他の年金が発生した月の翌月分から受け取ることができます。

2.6 老齢年金「繰下げ受給」注意点⑥:基金等から年金を受け取っている場合

厚生年金基金または企業年金連合会(基金等)から年金を受け取っている方が、老齢厚生年金の繰下げを希望する場合は、基金等の年金もあわせて繰下げとなります。

詳しくは、年金の支払元である基金等にご確認ください。

2.7 老齢年金「繰下げ受給」注意点⑦:増額による保険料や税金への影響

このほか、年金生活者支援給付金、医療保険・介護保険等の自己負担や保険料、税金に影響する場合があります。

2.8 老齢年金「繰下げ受給」注意点⑧:繰下げ待機中に亡くなった場合

繰下げ請求は、遺族が代わって行うことはできません。

繰下げ待機中に亡くなった場合で、遺族の方からの未支給年金の請求が可能な場合は、65歳時点の年金額で決定したうえで、過去分の年金額が一括して未支給年金として支払われます。

ただし、請求した時点から5年以上前の年金は時効により受け取れなくなります。

以上

繰下げ受給を利用する際には、上記のような注意点がありますので慎重に判断しましょう。

「年金を増やす」という側面では大きなメリットとなりますが、寿命という予測しづらい期限との兼ね合いもあり、絶対的に「得」となるわけではありません。

見落としがちなケースとして、加給年金の対象となる夫婦の事例を紹介しておきます。