2. 年金給付に係る事務処理誤りで対応した事象を紹介
2022年度のミスに限らず、これまで発生した事務処理誤りのうち「未払い」に関して、特に多かったと報告のある主なものを紹介します。
- 振替加算の支給漏れ
- 配偶者状態の登録誤りによる加給年金の支給漏れ
- 二以上事業所勤務届が提出されていない場合の年金額の計算誤り
それぞれについて、以下に説明します。
2.1 事務処理誤り「未払い」が起こりやすい事象1:振替加算・加給年金
加給年金は、一定の条件を満たした老齢厚生年金の受給者(夫)に年下の妻がいる場合、夫が65歳からもらう年金に加算される家族手当金です。
そして、妻が65歳になると、夫に加算されていた加給年金は支給停止となり、代わりに妻の老齢基礎年金に上乗せされる振替加算になります。
ただし、振替加算は自動的に加算されないため、受け取るには以下の書類を年金事務所に提出する必要があります。
- 国民年金 老齢基礎年金額加算開始事由該当届(様式第222号)
- 戸籍謄本
- 世帯全員の住民票※1
- 妻自身の所得証明書※1
※1:マイナンバーを書類に記載した場合などは、年金事務所が、世帯全員の住民票・妻の所得証明書の情報を取得し、確認することになるため、添付は不要です。
なお、振替加算は「昭和41年4月1日までに生まれた妻」が対象です。
振替加算は、妻の年金に加算されるものですが、そのタイミングは夫が65歳になったときです。
もし、妻が夫よりも年上であれば、既に老齢基礎年金をもらって、数年経過していることもあり、手続きすることを忘れることがあるかもしれません。
また、そもそも振替加算の存在を知らなければ、申請を行わないという場合も考えられます。
妻が夫よりも年上という場合は、とくに注意するようにしましょう。
なお上述のたとえは、夫が年上で妻の生計を維持しているという仮定で紹介していますが、男女逆でも加給年金、振替加算は適用になります。
2.2 事務処理誤り「未払い」が起こりやすい事象2:二以上事業所勤務届
「二以上事業所勤務届」は、同時に2か所以上の会社に勤める人が提出する書類です。
たとえば、ダブルワークをしている場合、2か所目の勤務先が社会保険適用事業所で、勤務する人が社会保険への加入要件を満たしている場合は、その事実が発生したときから10日以内に以下の書類の提出が必要です。
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届
- 被保険者証
老齢厚生年金は、報酬に比例して年金額が決まります。
この手続きを忘れてしまうと、将来受け取る年金額が少なくなってしまいます。
ダブルワークをする方は気をつけるようにしましょう。
3. 年金を確認する習慣を
人が絡む手続きには、事務処理誤りが起こることは考えられます。
自分がもらう年金で起こらないよう、日ごろから「ねんきん定期便」を確認したり、年金制度について勉強したりしましょう。
参考資料
- 日本年金機構「事務処理誤り等(令和4年4月分~令和5年3月分)の年次公表について」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 日本年金機構「国民年金 老齢基礎年金額加算開始事由該当届(様式第222号)」
- 日本年金機構「健康保険 厚生年金保険 被保険者所属選択 二以上事業所勤務届」
- 日本年金機構「健康保険・厚生年金保険」
舟本 美子