新NISA「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の違い
「つみたて投資枠」は、期限の撤廃、投資枠の拡大以外は、現行のつみたてNISAをほぼ踏襲しており、投資対象商品は現行つみたてNISAと同様となっています。
年間投資枠は120万円で、初心者の方にはインデックス型の投資信託での長期保有が適しています。
「成長投資枠」は、現行の一般NISAを引き継いだものとなっていますが、投資対象商品は毎月分配金を支払うものや、デリバティブ取引を用いた一定の投資信託などを除外しています。
年間投資枠は現行一般NISAの倍の240万円となりました。株式の個別銘柄を短期間で売買して利益を狙う使い方ができる一方で、成長投資枠を使って、つみたて投資枠と同様に長期保有を目的とした投資信託の購入に充てることもできます。
そのため、成長投資枠も使えば、年間360万円の積立投資が可能です。ただし、成長投資枠を限度額まで使うと5年で成長投資枠の上限に達します。
投資できる金額と投資できる期間から考える
「つみたて投資枠」と「成長投資枠」をどのように使うかは、投資できる金額と投資できる期間によって決めるといいでしょう。
老後資金が目的で、あなたが20代であれば、40年ほどの期間をかけて投資をすることができるので、年間45万円の積立投資で1800万円の枠を埋めることができます。毎月にすると、3~4万円になります。
つまりこの場合、「つみたて投資枠」だけで生涯投資枠の1800万円を使い切ることができます。
30代であれば30年間、40代であれば20年間といったように、老後までの期間が短くなるにつれて、毎月の積立金額を増やす必要があります。
30年では年間60万円、20年では年間90万円を投資すれば、「つみたて投資枠」だけで1800万円の枠を使い切ることができます。
老後資金を貯めるのに、時間をかけられない50代の人はどうすればいいのでしょうか。この場合、「成長投資枠」を使って一括投資をすることで、1800万円に到達することが可能です。
たとえば、毎月8万円を「つみたて投資枠」で積み立て、ボーナス月に40万円を年2回、「成長投資枠」を使って一括投資をすれば、10年間で1760万円投資することができます。
このように年齢から投資できる期間が決まってくるので、自ずと積立額も決まってきますが、これらは一つのパターンに過ぎません。
20代で、年間360万円を投資に回せる人もいるかもしれません。年齢に関係なく、なるべく短期間で1800万円を目指す戦略を取る人もいるでしょう。
また、年に120万円投資できる年もあれば、50万円しか投資できない年もあるなど、計画通りにはいかない場合もあります。
そもそも1800万円の枠を必ずしも使い切る必要もないのです。無理をせずに、その時々の状況にあわせて柔軟に新NISAを活用していきましょう。
「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の活用例4つ
ここでは、積立投資をメインとした投資初心者向けの活用例を4つご紹介します。ご自身の状況と合わせて、投資プランの参考にしてみてください。
毎月5万円、30年間のプラン
つみたて投資枠:毎月5万円(年間60万円)×30年間=1800万円
<このプランが向いている人>
- 長い期間をかけて積立投資ができる20代、30代の人
- 投資に時間を取られたくない人
- リスクを抑えたい人
つみたて投資枠のみを使って、長期保有を目的とした投資信託を積み立てていく方式です。
基本、積立設定をした後は放っておけるので手間がかかりません。また、分散投資に適した一定の投資信託を積み立てていくため、リスクを抑えた堅実な運用ができます。
毎月5万円+ボーナス30万円、20年間のプラン
つみたて投資枠:毎月5万円(年間60万円)×20年間=1200万円
成長投資枠:ボーナス月15万円×2回=30万円 年間30万円×20年間=600万
<このプランが向いている人>
- ボーナスを投資資金に使える人
- 40代、50代の人
- リスクを抑えたい人
毎月5万円のペースで積立期間が20年になると、1800万円の枠を使い切るためには、ボーナスを使っての追加投資が必要になります。
この場合、一括投資となるので成長投資枠を使いますが、リスクを抑えたい場合は、成長投資枠でもつみたて投資枠と同じインデックス型投資信託を購入するとよいでしょう。
毎月3万円+ボーナス10万円、40年間のプラン
つみたて投資枠:毎月3万円+ボーナス10万円(ボーナス5万円×2回)=年間46万円
年間46万円×40年間=1840万円
※積立設定の「ボーナス積立」でボーナス分を追加投資することができます。
<このプランが向いている人>
- 長い期間をかけて積立投資ができる20代の人
- 毎月の積立額を軽くしたい人
- ボーナスの一部を投資資金に使える人
- 投資に時間を取られたくない人
- リスクを抑えたい人
毎月5万円の積み立てが困難な場合、期間を長く取ることで、毎月の積立額を抑えることができます。収入は少ないけれど、老後までに長い時間がある20代におすすめのプランです。
毎月8万円+ボーナス80万円、10年間のプラン
つみたて投資枠:毎月8万円(年間96万円)×10年間=960万円
成長投資枠:ボーナス月40万円×2回=80万円 年間80万円×10年間=800万円
960万円+800万円=1760万円
<このプランが向いている人>
- 長期間の積立が難しい人
- 収入が多い人
- リターンを追求したい人
成長投資枠で、株式の個別銘柄などを購入し、値上がりしたら売却して、空いた枠を再利用することを繰り返して、積極的にリターンを求める方法がとれます。
ただし、リスクが高くなるので、投資経験者向きです。投資初心者は成長投資枠でも、つみたて投資枠と同様の投資信託を購入するとよいでしょう。
投資プランはいつでも変更できる
新NISAは、つみたて投資枠と成長投資枠の併用ができ、非課税保有期間は無期限、途中で売却しても枠が再利用できるので、その人のライフプランにあわせて柔軟に活用できます。
そのため、途中で投資プランを変更することに躊躇することはありません。
教育費の出費が多くなる時期は積立額を減らし、子供が独立して家計に余裕ができたら、1800万円の枠を一気に埋めるなど、ライフイベントにあわせて活用できます。
もう一つ、その人の投資スタイルの変化によるプラン変更もあります。
新NISAを始めた時は投資初心者であっても、時間の経過とともに投資の知識と経験が増え、積極的な運用スタイルを求めるようになるかもしれません。
その場合は、短期での売買に適した成長投資枠を積極的に活用することでリターンを追求することができます。その分リスクも高くなるので、つみたて投資枠と併用して行うとよいでしょう。
参考資料
石倉 博子