「おひとりさま」の老後実態。収入と支出のバランスは?
前章にて、おひとりさま世帯において「貯蓄」をしている人としていない人で二極化している状況がわかりました。
とはいえ、老後までに貯蓄準備をしていなくても、年金だけで生活費をまかなえるのであれば、貯蓄がないことはさほど大きな問題にはならないでしょう。
では、「老後にもらえる年金受給額」と「老後の消費支出」はどのくらいなのでしょうか。
厚生労働省の「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金の平均月額は「5万6368円」、厚生年金の平均月額は「14万3965円」となりました。
国民年金の場合は、保険料が一律であり、加入期間と納付月数が同じであれば、同じ給付額となります。
一方で厚生年金は、現役時代の年収や加入期間などが反映されるため、国民年金の受給額よりも大幅に多いです。
次に老後の消費支出について見てみると、総務省の「2019年全国家計構造調査 家計収支に関する結果」では、単身世帯の1ヶ月の平均消費支出は、男性で「14万3354円」女性で「14万607円」となりました。
上記の年金受給額と比較すると、厚生年金の場合はギリギリ足りますが、国民年金の場合は赤字となります。
とはいえ、上記は生活の最低限必要な消費支出であるため、ゆとりのある老後を暮らすためにはやや心もとない金額ともいえます。
また、老後生活では家の修繕費や、突然のケガや病気といった突発的な支出も出てくるため、やはり年金だけで生活していくのはハードルが高いものといえます。
40〜50歳代となり「老後生活が不安」と感じている方は、まずはご自身の年金受給額と老後の生活費を算出し、不足する分の金額を明確にしたうえで、老後資金の準備をしていきましょう。
老後に向けて今から準備をしておこう
本記事では、40〜50歳代「おひとりさま世帯の貯蓄事情」について詳しく解説していきました。
40〜50歳代の平均貯蓄額をみると、中央値と平均に大きな差が生じていることから、「貯蓄ができている人」と「貯蓄ができていない人」の二極化傾向にあるとうかがえます。
貯蓄はなくても年金だけで過ごしていけるのであれば問題ないですが、年金だけで生活している人はそう多くはありません。
実際に、厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」では、100%年金だけで生活している人は、全体の44%と半数にも満たない結果となっています。
ゆとりのある老後生活を送るためには、「自分が受け取れる年金受給額」を把握し、「老後に不足する金額」を想定し、老後の準備をすることが大切です。
特におひとりさま世帯は、自分で行動・選択することが多いため、今のうちから老後に向けて安心した老後生活が送れるように備えておきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](平成19年以降)」
- 総務省「2019年全国家計構造調査 家計収支に関する結果」
- 厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」
太田 彩子