地域別最低賃金額を改定。引き上げ額は過去最高

厚生労働省は2017年8月17日、2017年度の地域別最低賃金額の改定結果を発表しました。発効日は各都道府県で異なり、9月30日~10月14日から順次、新しい最低賃金額が適用されています。

2017年度の最低賃金の全国加重平均額は848円で、前年度に比べ25円上がりました。引き上げ額は、現在の方式になってから最高です。

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。

地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、罰則(50万円以下の罰金)が定められています。仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても法律によって無効とされます。

最低賃金には、各都道府県に1つずつ定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。

地域別最低賃金は、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など雇用形態や呼称に関係なく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。

労働者に支払われる賃金のうち、最低賃金の対象となるのは毎月支払われる基本的な賃金です。残業代やボーナスは含まれません。ちなみに、派遣労働者には、派遣元の事業場の所在地にかかわらず、派遣先の最低賃金が適用されます。

賃金の実態調査結果などを参考に各都道府県の審議会が決定

では、最低賃金はどうやって決まるのでしょうか。最低賃金は、最低賃金審議会(公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成)において、賃金の実態調査結果など各種統計資料を参考にしながら審議を行い決定しています。

地域別最低賃金は、全国的な整合性を図るため、毎年7月ごろ、厚生労働省の中央最低賃金審議会から地方最低賃金審議会に対し、金額改定のための引上げ額の目安が提示されます。

地方最低賃金審議会では、その目安を参考にしながら地域の実情に応じた地域別最低賃金額の改正のための審議を行い、各地の労働局長に答申します。これらが取りまとめられ、毎年10月上旬に改定されます。

最低賃金が最も高いのは東京の958円、最も低いのは沖縄など8県

昨年の答申で800円を上回っていたのは、埼玉、千葉、東京、神奈川、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫の9都府県でしたが、今年は北海道、栃木、岐阜、三重、広島の5道県が新たに800円台に引き上がりました。

最低賃金が最も高いのは東京の958円です。では最も低いのはどこでしょうか。沖縄などの737円です。2002年に現在の方式になってから、沖縄の最低賃金はずっと、最も低くなっています。全国平均と比較して毎年ほぼ100円以上、年度によっては160円以上の差があります。

ネットなどでは沖縄の最低賃金の低さが話題になっていますが、実は、そのほかにも沖縄と同様に最低賃金が低い県があります。今年は、沖縄と同じ737円の県が、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島と7県あります。

沖縄が注目されるので目立っていませんが、実は、九州は福岡を除けばどの県も最低賃金が低く、毎年、沖縄と1円~2円差か同じです。特に宮崎は、2002年に現在の方式になってから16年間で、沖縄よりも高かったのは4年しかありません。しかもその4年間も、沖縄との差は1円だけでした。

九州以外で最低賃金が低いのは青森、岩手、秋田で、いずれも今年の最低賃金は738円で、沖縄との差は1円でした。

最低賃金の低い県と東京などとの格差問題も生じていますが、最低賃金の上昇には企業経営を圧迫するリスクもあるだけに、舵取りが難しいところです。

下原 一晃