2023年8月31日に日本証券アナリスト協会主催で行われた、株式会社オーネックス2023年6月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社オーネックス 代表取締役社長 鶴田猛士 氏

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鶴田猛士氏:本日はお忙しい中、弊社の決算説明会においでいただき誠にありがとうございます。6月に前社長の大屋和雄が急逝し、その後を引き継いで社長となった鶴田でございます。よろしくお願いいたします。

本日は、当社グループについて簡単にご紹介し、2023年6月期の決算概要、2024年6月期の通期業績見通し、今後の展望についてご説明します。

当社グループ

当社の事業拠点をご紹介します。本社は東京都町田市にあり、神奈川県に厚木工場、埼玉県に東松山工場、山口県に山口工場の3つの工場があります。厚木工場と東松山工場は、主に関東以北のお客さまを担当しています。山口工場は、中国・九州エリアの営業の基幹としています。

子会社のオーネックステックセンターは、オーネックスと同じく熱処理を展開しており、こちらは主に中部・近畿・東海エリアをカバーしています。同じく子会社のオーネックスラインは運送業で、神奈川県、埼玉県、三重県に営業所を置いています。熱処理製品や一般貨物の運送を行っていますが、特に機械設備の運送に強みを持っています。

事業内容と売上高構成

事業内容と売上高構成です。当社グループは、金属熱処理加工事業と運送事業を展開しています。売上高構成は、スライド右側の円グラフのとおり、金属熱処理加工事業が約9割、運送事業が約1割です。

決算ハイライト

前期の決算のハイライトです。金属熱処理加工事業においては、自動車関連事業が半導体不足のため低迷しましたが、産業工作機械などが堅調に推移し、売上高は増収となりました。一方で、原材料費の高騰により営業利益は減益でした。

また、熱処理に伴う製品の曲がり矯正などを行っていた、持分法適用会社である株式会社昌平は、事業を清算することとなりました。こちらに対する貸倒引当金の再評価を実施した結果、貸倒引当金の戻入益を計上することになり、経常利益は増益となりました。繰延税金資産の計上等により、純利益も増益となっています。

運送事業については、一般貨物の運送が持ち直し、売上高が増加しました。

通期実績

通期実績です。売上高は53億6,500万円となりました。自動車関連産業が低迷したものの、産業工作機械や建設機械関連の受注が好調であったことに加え、熱処理単価の引き上げ効果もあり、若干ながらも増収となりました。

営業利益は7,400万円です。前々期の71期に、金利上昇に伴い退職給付費用関係の割引率が変更となったため、費用計上が減少しました。72期には特殊要因がなくなって退職給付関係費用が元に戻りました。

先ほどお伝えしたとおり、経常利益は持分法による投資利益により1億9,400万円となり、前期比で増益となりました。純利益は繰延税金資産の計上もあり2億2,100万円と、前期比で5,900万円の増益となりました。

財務指標の推移

財務指標の推移です。新型コロナウイルス感染拡大によってここしばらくは低迷しており、営業利益率は1.4パーセント、ROEは4パーセント、1株当たり純利益は133円70銭となっています。

連結売上高の推移

連結売上高の推移です。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて数期に渡って売上高は低迷しましたが、スライドのグラフのとおり、コロナ禍の収束に合わせて徐々に回復している状況です。

連結経常利益の推移

連結経常利益の推移です。先ほどお伝えしたとおり、持分法適用会社である昌平の貸倒引当金の再評価により、戻入益を9,600万円計上したため、経常利益は前期比で増益となりました。

連結営業利益の主な増減要因

連結営業利益の主な増減要因です。売上高は増加しましたが、エネルギーコストや販管費の増加により、営業利益は7,400万円と前期比で減益となりました。お客さまにコスト上昇分の値上げを要請しましたが、一部のお客さまにはいまだ受け入れてもらえず、引き続き交渉を続けているところです。

セグメント別業績

セグメント別業績です。金属熱処理加工事業の売上高は前期比0.5パーセントの47億7,100万円で、微増となりました。運送事業の売上高は前期比6.8パーセントの5億9,300万円で、増収です。セグメント利益について、金属熱処理加工事業は前期比3,900万円減益の2,900万円、運送事業は前期比でほぼ横ばいの2,600万円となりました。

業種別シェア及び売上高(ONEX及びOTC)

業種別売上高の構成です。自動車部品関連が32.4パーセント、建設機械が13.2パーセント、産業工作機械が47.5パーセントとなりました。スライド右側の棒グラフのとおり、ここ数年の売上高は自動車関連が減少する一方で、産業工作機械や建設機械関連が増加しており、このトレンドは今後も続いていくものと考えています。

設備投資(連結)の状況

設備投資の状況です。2023年6月期の不動産投資としては、お客さまの新規獲得による増産に対応するため、三重県にある子会社のオーネックステックセンターの炉を1基増設しました。

2022年6月期の投資額はやや増えています。こちらは山口県にある2つの工場について、繁閑に応じて機動的な運営を行えるように設備投資を実施したためです。

連結キャッシュフローの状況

連結キャッシュフローの状況です。営業キャッシュフローは前期比で増加しています。先ほどお伝えしたとおり、前々期は退職給付費用関係が少なく、前期は通常に積み立てたためです。

投資キャッシュフローについては、先ほどお伝えしたとおり、設備投資や更新投資による有形固定資産の取得を行いました。

財務キャッシュフローについては、新型コロナウイルス感染拡大が発生した際に、非常事態に備えて例年よりも借入金を増やしていきました。現在、コロナ禍が収束に向かっているため、ここから借入金を少し圧縮していく考えです。

現状では、現預金が借入金を上回っているという状況もあり、このあたりは少し圧縮しておこうと考えています。

連結貸借対照表

連結貸借対照表です。総資産は99億3,500万円と、前期比で1億4,900万円増加しています。コロナ禍により、ここしばらくは大きな投資は行っていません。

自己資本比率は56.9パーセントです。オーネックステックセンターの投資を行った時に大きく下がりましたが、徐々に改善に向かっています。

2024年6月期業績予想(連結)

2024年6月期の業績予想です。売上高は前年比4.1パーセント増収の55億8,200万円、営業利益は前年比9,700万円増益の1億7,100万円、純利益は前年比1億8,400万円増益の4億600万円と予想しています。

前社長が亡くなったことに伴い、生命保険金の受け取りがあります。それを特別利益に計上することにより、大幅な増益になる見込みです。

配当方針と配当予想

配当については、2024年6月期も1株当たり20円を見込んでいます。当社は安定配当を基本方針として今まで配当を行ってきました。

ちまたでは企業が内部留保しているなどと言われていますが、当社はオーネックステックセンターに総額約30億円を投資しました。投資した時の総資産は約70億円でしたので、かなりの金額の投資を行ったということで、方針どおりの運営を行っています。

これまでの経営戦略概要

前社長在任中の約10年間に実施した経営戦略についてお話しします。2013年に、生産体制の強化を図るため、OJTソリューションズというトヨタ自動車とリクルートの合弁会社のコンサルを導入しました。

2014年には、それまで車で2時間半ほどかかっていた東松山工場から厚木間が、圏央道の開通によりほぼ1時間で通えるようになったため、人員の効率的な配置として工場長の1人体制を実施しました。副工場長、次長、課長の兼務体制を発令し、人員の合理化を行って一体化運営を進めたということです。

同年に、熱処理市場が拡大している近畿・東海エリアの熱処理受注の取り込みを狙い、三重県亀山市にオーネックステックセンターを設立しました。これは成長戦略であると同時に、BCP対策の意味もあります。

亀山市には、リニア中央新幹線の駅ができることになっています。私が10年ほど前にこの団地を見に行った時には、駅前にはタクシーもなくて苦労しました。今は駅前が再開発され、マンションができたり、タクシーがかなり並んでいるなど様変わりしています。

シャープの亀山工場も同じ団地で、当社が入った時にはまだ第1次の造成した区画がかなり売れ残っており、その後、徐々に埋まっていきました。これは住友商事が作っているのですが、その後に追加で10区画をさらに造成して販売し、こちらもすでに埋まったということです。主な企業としては、エア・ウォーター株式会社が工場を建てています。

2017年には、神奈川県厚木市にあった本社を東京都町田市に移転しました。今は学生が就職活動を行う際に東京本社でネット検索することが多いため、採用活動を有利に展開するための知名度向上を目的として行いました。

2021年には新型コロナウイルス感染拡大を受け、業績が急激に悪化した長野工場を閉鎖しました。また、CO2削減のため、自家消費型太陽光発電システムをオーネックステックセンターと山口工場に導入しました。

2022年には、山口工場の生産集約を行いました。先ほどお伝えしたとおり、山口県には工場が2つありますので、生産を仕事の繁閑に合わせて機動的な運用ができるように、設備投資を実施しました。最後に、今年5月に多能工化と仕事の定量化のためのプロジェクトチームを発足させました。

これらは過去10年ほどで実施したことですが、その前の10年は当社のお客さまから盛んに中国への進出を要請され、私も中国に出張していろいろ調査しました。その結果、やはり政治的なリスクが多く、事業性もあまりないということがわかりました。

私はオーネックスの前に勤めていた会社で7年ほど海外に駐在していましたので、海外は企業の運営が難しいということも含めて総合的に判断し、中国への進出を見送ったという経緯があります。

最近では、中国から撤退する企業が増えているという新聞記事もあり、当社の選択は正しかったと考えています。その間、内部留保分で国内拠点の充実を行ったということです。

熱処理事業を取り巻く環境と対応等

ロシア・ウクライナ情勢や人手不足、カーボンニュートラルなど、当社を取り巻く環境は非常に厳しい状況ですが、今後、熱処理の需要は徐々に増えていくのではないかと予想しています。

まず、貿易摩擦や安全保障上の問題から、企業の国内回帰・国産回帰等の動きが出始めており、熱処理需要につながることが期待できます。

また、熱処理を内製していたメーカーでは設備の老朽化が進み、人材確保が困難になっており、専門の職人をイチから育てるためには教育コストが大きくかかることなどから、外製化する動きが出てきています。オーネックステックセンターについては、3社の外注化により新規の獲得実績があります。

現在の熱処理の外注市場は約1,000億円です。メーカーで内製熱処理されている規模については正式な統計はありませんが、2,000億円から3,000億円と考えられています。現在の外注市場の2倍から3倍の需要があるということです。

防衛予算の増額を受け、防衛産業からの受注増加も期待できます。先日、海上自衛隊の護衛艦「いずも」に乗せていただき、情報収集してきました。このような世の中の変化にも柔軟に対応しながら、事業を展開していきたいと考えています。

自動車関係はEV化による部品数の減少に伴い、熱処理の需要も減っていくと言われていますが、新規受注も十分に見込まれます。生産体制を強化し、需要を取り込む体制の構築を図っていきます。

今期以降の取組み(2023.7~)

トヨタ生産方式のコンサルを導入した際に、まず労務管理が甘いと指摘を受けました。人手不足やコスト高の中で、今後は労務管理が最重要課題であると認識し、プロジェクトチームを立ち上げて取り組みを始めました。人手不足対策と生産性向上施策として、多能工化と自動化を進めています。

今期以降の取組み(2023.7~)

またコンサルから「工場内の各部門が個人商店のように独立して運営されており、非効率である」という指摘を受けました。仕事を定量化することで部署ごとの忙しさを把握し、多能工化を進めて部署間の応援体制を築いていきたいと思います。

今期以降の取組み(2023.7~)

当社において新型コロナウイルスの影響が一番大きかったのは、オーネックステックセンターです。新規顧客開拓のための訪問活動が完全に止まってしまい、当初見込んでいた売上高に届いていない状況です。

オーネックステックセンターの設備能力的には売上高を20パーセントから30パーセント程度伸ばすことが可能ですので、今期以降、あらためて新規顧客の獲得に取り組みます。

また、6,000坪ある土地のうち、工場が建っているのは約半分です。今後、熱処理需要が増えた際には、増産投資のために新しく工場を建てることも可能です。

今期以降の取組み(2023.7~)

カーボンニュートラルな社会への対応として、当社の熱処理事業を担う4拠点におけるCO2排出量を表にまとめています。現在は合計で年間約2万トンのCO2を排出している状況です。

今期以降の取組み(2023.7~)

CO2排出量の削減策として、オーネックステックセンターと山口工場に自家消費型太陽光発電システムを導入しました。2施設合わせて、年間で約170トンのCO2を削減できます。約2万トンの排出量に対して0.8パーセント程度ではありますが、企業としてやるべきことをやっていく方針です。今後、厚木工場と東松山工場にも導入したいと考えています。

今期以降の取組み(2023.7~)

CO2排出量削減のさらなる対策として、ガス浸炭炉を電気炉やもう少し性能の良い真空浸炭炉に転換する検討を進めています。

ただし、現在の日本は石炭火力発電への依存度が非常に高く、今の状態で電気炉に転換してもCO2排出量は7パーセント程度しか削減できないという問題もあります。国のエネルギー政策を注視しつつ、できる限りの対応を行っていく方針です。

私からの説明は以上です。ありがとうございました。

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