ロボットスーツと共演する波瑠さん
波瑠さんといえば、明治期の女性実業家を描いたNHKの連続テレビ小説『あさが来た』(2015〜2016年放映)や、最近では同級生が再会しダブル不倫となる物語を描いたTBSのドラマ『あなたのことはそれほど』などで有名な女優さんです。
その波瑠さんが、ロボットスーツと一緒に共演しているテレビCMをご存じでしょうか。
どこかの研究所のようなところに現れた波瑠さんが、研究員から「こちらが医療用ロボットスーツHALです」と紹介されると、「え? HAL(ハル)?」と笑顔で答えるシーンをご記憶の方も多いのではないでしょうか。
そのCMは、T&Dホールディングス(8795)傘下の大同生命によるもので、同社が提供する「HALプラス特約」を説明する内容となっています。10月1日から放映されていますが、同社のYouTube 公式チャンネルからも観ることができますので、まだ見たことのない方はこちらでご覧になってみてください。
なぜ波瑠さんなのか?
ところで、波瑠さんは、なぜこのCMに起用されたのでしょうか。その理由は2つ考えられます。
第1の理由は、波瑠さんが『あさが来た』で演じた主人公の白岡あさのモデルは、大同生命の創業者である広岡浅子氏であり、その縁もあってか波瑠さんが同社のイメージキャラクターとなっているためです。同社のCMに波瑠さんが登場するのは今回で3本目となっています。
第2の理由は、言うまでもなくロボットスーツの製品名である「HAL(ハル)」と波瑠を掛けたことによります。ちなみに、このHALを開発したのはCYBERDYNE(サイバーダイン)(7779)という東証マザーズに上場している筑波大学発のロボットベンチャー企業です。
同社の製品は波瑠さんほど有名ではないと思いますので、簡単にその内容を見てみたいと思います。
ロボットスーツ「HAL」でできること
ロボットスーツHALはHybrid Assistive Limbという3つの英単語の頭文字を取ったもので、同社によると身体機能を改善・補助・拡張・再生することができるロボットを意味するとされています。
同社以外にも荷物の持ち運びなどをサポートするパワーアシスト型のロボットは既にめずらしいものではなくなっています。ただし、こうしたロボットは医療用としては使われていません。一方、HALは、今回のCMにもあるように医療用としても使うことができます。
その最大の違いは、HALには人間の脳から神経を通じて筋肉へ送られる微弱な「生体電位信号」を読み取る機能が付加されており、その信号によってロボットを制御することが可能となっていることにあります。
脳出血などで脳に障害を持ってしまうと、脳から筋肉に送られる生体電位信号を読み取るループが一時的に途絶えてしまいますが、HALを使って脳を訓練することで、このループを復元することが可能になるとされているのです。
既に同社の医療用HALは、世界初の「ロボット治療機器」として欧州、日本で医療機器の承認を取得しています。また、日本では、2016年9月から8つの神経・筋難病疾患を対象に、新医療機器として公的医療保険を使った治療が開始されており、医療用ロボットとしての実績を積み重ねています。
「HALプラス特約」でできること
さて、前述のCMは、「進化し続ける医療技術にあわせて、保険だって進化していく」、「企業と働く人のために、保険会社にできることはもっとあるはずです」というナレーションによって締めくくられています。
では、保険にはどのような”進化”があるのでしょうか。
HALプラス特約は、大同生命の「総合医療保険 Mタイプ」(無配当総合医療保険)という、ケガ・病気による入院、所定の手術および放射線治療を保障する保険に加入すると、無料で取得できる特約です。
また、この特約があれば、脊髄性筋萎縮症や筋萎縮性側索硬化症(ALS)など8つの難病に罹患し、医療用HAL(下肢タイプ)による治療を受けた場合、HALプラス給付金(一時金で100万円)を非課税で受け取ることができるようになります。
まとめ
これまでのところ、HAL特約を設けた民間医療保険を提供しているのは大同生命だけですが、他の保険会社も今後同様な取り組みを行うのかが注目されます。
また、医療用HALは、上述の難病だけではなく脳卒中で障害を負った患者への治療を行うための治験も日本で始まっています。さらに、米国でも医療機器として販売を行うために、FDA(米食品医薬品局)の審査も進行中です。こうした動きで医療用HALの販売が世界的に加速していくかも気になるところです。
なお、これまでのところCYBERDYNEはテレビCMを行っていませんが、将来、同社のCMにも波瑠さんが起用されることがあるかもしれません。その点も楽しみに注目していきたいと思います。
和泉 美治