日経平均が2万円を安定的に超え、その水準は3万円を目指すと言う人も出てきました。この株高は本物なのでしょうか。今回は好調な日本株を取り巻く環境について、懸念事項はないのかを考えてみました。

日本株は誰が買っているのか

日本株を買い上げているのは誰でしょうか。国内の年金や投資信託を運用する機関投資家と呼ばれるいわゆるプロの投資家でしょうか。それとも個人投資家でしょうか。

現在の株高を演出しているのは、2017年10月に入って大きく買い越している「海外投資家」です。個人投資家や法人が大きく売り越している中で、10月単月で2,000兆円以上を買い越しています。日本の個人投資家が株高を見て株式を売却する一方で、不思議なことに外国人投資家は「日本株に投資妙味がある」と見て買いを入れている状況です。

では、今回の個人投資家の売りと外国人投資家の買い、いったいどちらが正しいのでしょうか。

下図は、日本証券取引所の開示データにおける投資主体別のネット売買金額(兆円)とTOPIX(東証株価指数)の2015年10月以降の推移を見たものです。

この図からは、この2年を振り返ると、一般的に言われるように海外投資家が買えば株価が上がり、彼らが売れば株価は下がっているように見えます。

ちょうど1年前の2016年11月は現在と似た状況で、個人投資家が大きく売り越し、海外投資家が大きく買い越していました。その後の株価推移はどうなったのでしょうか。

一口に投資家といっても、投資期間は様々です。ただ、海外投資家が必ずしも長期の投資家ではないとはいえ、過去1年を振り返ると売り越す月が多い個人投資家を尻目に株価が上昇基調だったことを考えれば、海外投資家に軍配が上がると言えるでしょう。

日本株は循環株。長期の資産形成には不向き!?

このように海外投資家の買い熱量が上がっている日本株ですが、日本株は日本の個人投資家の資産形成に向いている資産なのでしょうか。

運用会社で日本株やグローバル株式の運用経験があるA氏は次のように言います。

「日本株は、”TOPIXで800は目をつむって買い、1,800では目をつむって売れ”、と同僚の間では言われていましたね。経済が循環するだけで継続的に拡大してこなかった日本経済なので、サイクルを上手に使うことで日本株でも超過収益を手にすることができました」

「ただし、それだと長期の資産形成に向いているとは言えませんよね。証券市場がどれだけ『貯蓄から投資へ』と叫んだところで、個人投資家もそうした上がったり下がったりして右肩上がりではない状況を見ていれば簡単に投資とはならないはずです。もっともデフレ経済でしたし」

現在はどう見ればよいのでしょうか。

「今がちょうどサイクルでいうところの天井のTOPIXで1800の水準です。今後、日本経済が継続的に拡大していくのであれば、TOPIXもまだ上昇していく余地はあるでしょう。株価からすればまさに正念場と言える水準です」(A氏)

個人投資家の投資環境は十分か

では、日本の個人投資家を取り巻く状況はどうなのでしょうか。また、日本株式投資への取り組み方はどのようなものなのでしょうか。

個人投資家で日本株を中心に投資をしている60代女性のB氏は次のように言います。

「日頃は証券会社のセールスマンの話や有料投資情報も利用しています。ただ、よく分析された情報は圧倒的に足りません。セールスマンの話も、話だけでは自信が持てないですね。情報そのものはインターネットで探せばいくらでも出てきます。ただ、投資経験が長くなってきたとはいえ、いつまでたってもプロの投資家に近づけたとは思えません。証券アナリストには決算発表後にポジティブだのネガティブだの言うのではなく、決算前に良い企業を発掘して推奨して欲しいものです」

では、B氏はどのような運用をしているのでしょうか。

「日本株中心です。様々な情報をもとに最終的には自分で判断して決めています。主人とは銘柄に関して意見が分かれることもよくあります。投資信託は以前は投資をしていましたが今はあまり手を出していません。やはり株価が動くほうが面白いと思います」

証券会社の調査結果も機関投資家には公開している情報も、個人投資家にまでは十分行き届いているとは言えない環境もあるでしょう。日本の個人投資家層のすそ野を拡大させるためには、ここまで見てきたように、株価が継続的に上昇するような市場環境と投資をスムーズに行うための情報整備が必要と言えるのではないでしょうか。

LIMO編集部