2. 年金「繰上げ受給」の損益分岐点はいつ?

繰上げ受給を行うときに考えたいのが「損益分岐点」についてです。

繰上げ受給は年金を早く受け取ることができるため、最初の内は「得」を感じられるかもしれません。

しかし、受け取り額は本来の年金額より減額されたものとなるため、どこかのタイミングで65歳から受給した人に累計受取総額を追い越されてしまいます。

たとえば、60歳から繰上げ受給をした人の例で考えてみましょう。

①60歳0ヶ月から繰上げ受給する場合、24%が減額されますので本来の76%分の年金を5年間先に受け取ることとなります。

76% × 5年間 = 380%

②一方、65歳から受給した場合は100%の年金額を受け取るため、その差額24%の累計が380%に追いつくまでにかかる時間は次の通りです。

380% ÷ 24% = 15.8年(約15年10ヶ月)

③この年数を本来受給開始する65歳に足すと、60歳から繰上げ受給する場合の損益分岐点は「80歳10ヶ月」となります。

65歳 + 15年10ヶ月 =80歳10ヶ月

つまり、80歳10ヶ月よりも前に亡くなった場合は、繰上げ受給した方が受取総額が多くなります。

3. 60歳時点での平均余命は約24~29年

とはいえ、60歳の時点で「いつまで生きるか」と予測できるわけではありません。

ここでは、平均余命をもとに考えてみましょう。

厚生労働省が2023年7月28日に公表した「令和4年簡易生命表の概況」によると、60歳時点での平均余命は男性が23.59年(83歳7ヶ月)、女性が28.84年(88歳10ヶ月)です。

繰上げ受給の損益分岐点は80歳10ヶ月でやってきますので、平均余命で考えると「繰上げ受給は損」ということがいえます。

「人生100年時代」といわれる現在、「長生きするほど損」となる繰上げ受給は慎重に考える必要があります。

いったん繰上げ受給を行うと、後から取り消しができない点も注意すべきポイントです。