以前、大学生のお子様への仕送りを、2カ月に1回にしているというお客様に出会ったことがあります。理由を伺うと、だって銀行の振込手数料が高いんだもん、おっしゃいました。老齢年金みたいですね、と一緒に笑い合った記憶があります。

そう、老齢年金の支給は年に6回、原則偶数月の15日に振り込まれます。現役時代にもらっていた毎月の給料と異なり2か月分がまとめて振り込まれる上、ボーナスもありません。収入のサイクルが変わるため、それまでとは支出の管理も改める必要があるといわれます。

しかし、そもそも受給できる年金額が少なければ、やりくりだけでは限界があります。資産形成の検討を始める第一歩として、まずは老後の生活を支える柱となる年金額はいくらなのか、統計データで確認してみましょう。

1.【日本の年金制度】2階建て構造の仕組み

年金制度についてよく知らないという方もいるかもしれません。

しかし、現役時代の働き方が老後の年金にも大きく影響しますので、基本的な仕組みについて確認しておきましょう。

日本の年金制度は「国民年金」と「厚生年金」の2種類の制度で構成されています。ベースとなる「国民年金(老齢基礎年金)」の上に「厚生年金」が置かれていることから「2階建て」ともいわれています。

それぞれの特徴は以下の通りです。

1.1 国民年金(1階部分)

  • 加入対象:原則、日本に住む20歳から60歳未満の方
  • 保険料:一律(年度ごとに見直しが行われます)
  • 年金額:満額79万5000円(2023年度の年額)※未納期間がある場合は減額

1.2 厚生年金(2階部分)

  • 加入対象:主に会社員、公務員など
  • 保険料:報酬比例制(毎月の報酬により決定)
  • 年金額:加入期間や納付保険料により決定(国民年金に上乗せで支給)

現役時代の働き方で、老後に受け取る年金が「国民年金」か「国民年金+厚生年金」と異なります。よって、老後に向けて年金以外の資産をどのくらい準備すべきかも異なるということになります。

年金というと「老後に受け取るもの」というイメージがあるかもしれません。しかし、障害年金や遺族年金など現役時代に起こりうる不足の事態をサポートする機能も持っていますので、先延ばしにせず今のうちから仕組みを理解しておきましょう。