私立と対戦して感じた差は「打撃力と外野守備」

今年は、春の大会で千葉学芸高校に3-4、夏の大会は千葉英和高校に4-6と私立に競り負けた四街道高校。

出所:筆者撮影

肌で感じた私立との差について、古谷健監督は「打撃力と外野守備の差が大きいと思います」「具体的に言うと、確実に得点を取る力です。例えば1死3塁の場面で確実に取ること。今年の千葉県大会では延長タイブレーク(延長戦は無死1、2塁でスタート)が多かったのですが、バントで1死2、3塁のチャンスを作っても意外と2点を取れることは少なかったのかなと思います」と話してくれました。

この夏までの四街道高校は私立相手に何度もチャンスを作ったものの、得点を取りきることはできなかったという。この点について、自分のせいだと反省する古谷監督。選手や場面に合うサインを含めて、お互いが自信を持てるまで徹底できなかったと説明。

30℃超えの厳しい環境で試合を行う夏の大会は、1人の投手だけでは勝てないため、長打力はもちろんチャンスをモノにする攻撃力が求められます。

今年の千葉大会を制した専大松戸高校は、7試合で62得点。1試合平均8.8得点の打線を作り上げてきています。5回戦では、プロ注目の150km/h右腕・早坂響(おと)投手を擁する幕張総合高校から6得点を記録しているように、確実に得点をもぎ取る攻撃力が必要だと言えます。

高校野球における外野守備の重要性

そして、意外な視点とも言える外野守備の差。

古谷監督は、「高校野球では外野を抜ければ、スリーベースになることが多いため、外野手の守備力が勝敗に大きく関わりますね。ランナー1塁であがった深い外野フライが捕れないだけで1点入りますし、ランナー2塁で外野に行ったヒットが得点につながります。千葉県で走塁も上手いチームは、レフト前ヒットでもホームに生還します。ランナー2塁時の三遊間のゴーorバック判断が徹底されています」

さらに続けて、「私立ほど選手層が厚くない公立では、外野に守備の上手い選手を置く余裕がない場合が多い。内野手(とくにショート)に上手い選手はいますが、外野の3箇所の守備力が揃っているチームは少ない印象を受けます。うち(四街道)もそうですね」と課題についても言及。

成長途上の球児がプレーする高校野球では、四球をキッカケにエラーでピンチを広げ、古谷監督が指摘したような外野守備によって、大量失点というケースが多く見られます。

また、守備範囲だけでなくスローイングミスによる失点も多い高校野球。その理由については、ボールに力を伝えるのが苦手な選手が増えた印象を持っているそう。

「以前までは体を使う遊びから、いろいろな動きをして体勢が崩れても自分の体を上手に使えていました。それがスマートフォンの普及によって、長時間の操作で猫背の時間が長くなり、体を上手に使えていない印象を受けます。しかし、今の子たちは情報を入手することが得意でたくさん持っているので、それを整理してあげることが大切だと感じます。そのために、理学療法士やスポーツトレーナーの専門的な力が必要ですね」と熱く語る古谷監督。

私立ほど選手を集められない公立では、入学時の基礎能力の差があります。2年半という短い期間で、その差を埋めるのは至難の業と言っても過言ではないでしょう。